援助する前に考えよう@順天高校

スタッフの星です。先日、スーパーグローバルハイスクール(SGH)指定校である順天高校で行ったワークショップの様子をレポートします。

教材『援助する前に考えよう』より
旅先のタイでこんな看板を見たら、あなたはいくら寄付しますか?
順天高校の生徒さんたちに聞いてみました。
一人ひとり寄付額を紙に書き、その理由をグループで話して寄付額を合算し、クラス全員で共有しました。寄付額も理由も様々。

  • 子どもたちがかわいそう
  • 日本人だから信用できる
  • $5くらいなら出せる

というような寄付をしたいという意見に対して、

  • 本当に学校のために使われるのか怪しい
  • そういう環境に生まれた運命だから仕方がない

などの寄付するのを躊躇する意見もありました。


生徒たちから沢山の多様な意見が出され、寄付や援助が生み出す現地へのプラス/マイナスの影響や、注意すべき点など、一枚の看板から話はどんどん発展していきます。

彼/彼女たちのうち、これからフィリピンでのスタディーツアーに参加する生徒がいます。教育支援をしているNGOと一緒に、現地の子どもたちへ学習サポートを行う予定だそう。
フィリピンへ赴く前に、自分たちが援助する側としてどんな影響を与える可能性があるのか、どんなことが起こりうるのかを想像してもらうため、私のボランティア体験談を聞いてもらいました。

大学3年生の半年間をブラジル、セアラ州フォルタレーザにある漁村で、仲間と過ごした時のお話です。
ジャンガーダという帆付きいかだを使った伝統的な漁業を継承するため、若者を対象にいかだ造りプログラムを考えました。「繁華街での遊び」に走ってしまいがちな村の青年たちに伝統を伝え、漁に興味を持ってもらうことがねらいでした。
いかだ造りプロジェクトの実施には資金が必要でした。
出発前に私が仲間と行ったのは駅前での募金活動でした。「貧しい環境で暮らす漁村の青年たちのために...」と言って2日間声を枯らすと、なんと12万円も集まったのです!
集まった資金を持って、いざブラジルへ。活動費としていかだの材料費と講師への謝金に充てました。
しかし、現地での活動は上手く運ばず、プログラムに参加する青年はだんだん去り、最後にたった一人の青年がなんとかいかだを完成させたのでした。

果たして、いかだ造りプログラムは誰のためのもので、誰が求めていたものだったのでしょうか?
青年たちの漁業離れの原因、問題点はどこにあったのか。いかだ造りを習えば青年たちは漁業に興味を持ったでしょうか?そもそも、伝統的な漁業を継承したいと村人たちは本当に願っているのでしょうか?

村での生活に慣れた頃、村の中に娯楽が少ないことが若者を繁華街へ向かわしていること、いかだで獲ってきた魚を繁華街のレストランオーナーなどに安く買われてしまっていることなど、日本で募金をしていた時には考えてもいなかったことに気づきました。


さて、高校生に今回のお話をする上で「私が村にもたらした影響」について考えました。
生活を始めて1週間ほど経った頃、泥棒に入られてしまいました。募金で集めた大金を村に安易に持ち込んでしまったことや、持っていたカメラや時計または服装から「お金を持っている」というイメージをもたらしてしまったのかもしれません。

それでも、子どもたちに桃太郎の劇を教えたときの彼らの笑顔、女の子たちとクリスマス会で発表した安室奈美恵のダンス。今でも彼らと話す共通の素敵な思い出です。お金は1円もかかりませんでした。大学生だった自分たちにできた等身大の活動であった、と今ふりかえってみて思います。

「もし、また漁村で活動するとしたら何がしたいですか?」という参加者の生徒からの質問に、ハッとしてすぐに答えられない自分がいました。

何が課題で、何をすべきだったのか?他にどんなことができたのか?まだ、分からないままでいます。分からない、それで良いのだと思います。

これからフィリピンへ行く順天高校の生徒たちにも、私の感じていた何かしてあげたい!という自信や、現地の想像と実際のギャップや、お金がもたらす影響、お金が要らない素敵な思い出など、沢山のことを感じて、体験してきてほしいです。そして、問いを持ち続けてもらいたいです。

授業の最後に、順天高校のニック先生が「Should we only help people who ask for help?」と問いかけました。
ワークショップ終了後、一緒に漁村へ行った仲間とブラジルでの半年間について話しました。
「漁村の人たちに対して同情してもらうような募金活動はもうできないよね、彼らはみんな今は友だちだもんね」と。

私自身にとっても、ブラジルでの半年間をふりかえり、「援助とは?」を考えるたいへん良い機会となりました。

生徒からの感想を紹介します。

  • 自分達で一からしたいことを決めて、全員がSGHとして何かをしたい。
  • 行ってみて気づくことや得ることがたくさんあるから、まずフィリピンがどんな状況なのかを見てきて、それから自分たちに何ができるかを考えたい。
  • 自分たちが現地の人々にどう見られているのかをよく意識する。
  • お金ではなく、異文化交流をして笑顔が増えたり、よい思い出になることをしたいなと思った。
  • 自分が生きている環境の中から“相手の立場に立つ”ということの難しさを感じた。
  • 相手の国の文化などに悪影響を及ぼしてしまうとしたら、ボランティアはしない方がいいんじゃないかと思った。
  • 自分が今までやってきたボランティアは役に立っていなかったのか…?
  • 何かするときに、個人でやるのではなく、人と人がつながり協力してやった方が心に残るし、やりおわった時に達成感があるだろう。

参加した生徒の報告が順天高校のHPより見られます。
http://www.junten.ed.jp/news/?p=6325

(報告:星)

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