第9回「国際成人教育協議会世界会議(WA)」 レポートその3

こんにちは。評議員の近藤です。
レポート第3弾をお送りいたします。

■6月10日(水)あたり

飛行機の飛ぶこと16時間。
乗り換えのシカゴで、シカゴ名物、相当分厚いピザにお目にかかり、モントリオールに到着するころは、朦朧としていました。
日付も時間も朦朧でした。
英語が読めないとあせったらすべて仏語表記でした。

会場であるモントリオール大学の学生寮兼ショートステイの部屋に行き、そのまま「バタンキュー」。夜に身体を奮い起こしてロ
ビーに行くと懐かしい面々に会えました。

今回裏方をしきっているカロリーナ(ウルグアイ)とカルメン(メキシコ)に、私の様子のあまりのひどさに「部屋に食べ物があるから来て!」と世話を焼かれるほどでした。
食べ物をいただきながら、楽しく次の日の準備の打ち合わせをして眠りにつきました。

■6月11日(木)

9:00-11:00 パネルディスカッション打ち合わせ

前事務局長のセリータ(ウルグアイ)から召集がかかっていた、ICAEのジェンダー教育部会(Gender Empowerment Office /GEO)が主催するパネルディスカッションの打ち合わせに行きました。
打ち合わせの様子
事前に聞いていたのは、“結束”のために紫色の身につけるものを準備し、参加者に配布してつけてもらおうということと、パネルディスカッションでセリータの話す間に合図を得たら、それぞれの国の少女、女性の状況を書いたペーパーを掲げて会場を歩く、という計画でした。

たとえば、「メキシコでは○分に一人がレイプされています」(すいません、何分か確かでないので)など、各国の女性たちの具体的な状況を示し、「誰がこうした状況の担当者?」というアピールです。

それらをいつ、どのタイミングで配布するかや、誰がどうやってペーパーを掲げるかなどを相談していると、私のIALLA、7期生バッジメイトである、スワンラタ(インド)、ロッジ(フィリピン)が加わり、ほっとしました。

2年前に、たった2週間しか会ったことがないにもかかわらず感じた安心感は、寝食を共にして、同じテーマをお互いに学んだ仲間というのはこういう親しみがわくのか、と感激しました。学習の経験をともに過ごすことと、人のつながりが築かれる関係性の強さを実感しました。
その後、受付をしに会場に行き、さらに懐かしい面々と挨拶を交わしました。

14:00-17:00 民衆教育市内ツアー

黄色いスクールバスの移動で休憩を除いてはバスのツアーでした。
The Other Montrealという団体による、民衆教育の視点での都市ツアー企画をお願いしたとのことです。ツアーのタイトルは「モントリオールの移民:キルト-移民第一世代から今日の文化的コミュニティへー」です。移民と労働階級の差別と、宗教と密接な文化的多元主義の歴史をガイドしてくれました。
ツアーのちらし。「モントリオールは多文化のキルト
―移民初期から今日の文化コミュニティへ」
アイルランド系コミュニティ。
港ぞいにコミュニティがある。そこで仕事をしていた。
現在、再開発ラッシュ。古い建物とのコントラスト。
英語を話すアフリカ系コミュニティは大きな駅の周辺にある。
荷物を運ぶポーターの仕事はアフリカ系のみ雇われたため。
これは、1923年にカナダで発行されたちらし。
白人女性の後ろに、荷物を運ぶポーターのイラストが。
中国系コミュニティはあまり大きくなく、インドやベトナムといった他のアジア圏も混ざっています。「相撲」の文字も‥
ユダヤ系コミュニティ。かつての労働者が住んでいた典型的なアパートに住んでいる。縫製、食品工場などで仕事をしていた。上下のアパートメントで二階への階段がある。

かつての労働者階級の建造物ペーパーキット。
労働者階級の建物と、富裕層が住む地域を隔てる道路を通ったときは、
「ハロウィンのときは、子どもたちがこぞって富裕層地域に行くから大変な騒ぎになるの」とのことです。

すべてのコミュニティが自分たちらしく生活をしているため、ユダヤ系の方々もアフリカ系の方々も独自の衣服を日常的に着ています。形式や場所を含んだ“住まい”は、文化の違いも表すということが「モザイク」なんだ、とやっと腑に落ちました。
アイデンティティを保持し、違いを露にしながら「共生」するには「分離」も含むのか、と。
多文化教育を学ぶと必ず出てくるカナダとケベックですが、実際に肌で感じることができて、光栄でした。

移民、人種差別の歴史や宗教、文化、分離と共存の状況など、深い事情までガイドをしてくれたわけですが、こんなんなにもセンシティブなテーマのツアーガイドを、ユダヤ系以外のすべての民族がそろっているICAEメンバー相手にするなんて、ガイドさんに感服でした。
「手法」は、あけっぴろげ。あかるい。ジョークでのフォローが上手。資料、情報も豊富。

私だったら使う言葉がぎこちなくなりすぎて、かえって、不自然で不愉快にしてしまいそうです。

私の住んでいる東京で移民やマイノリティに焦点をあてたツアーをやってみたら・・、とちょっとまたプロジェクトが頭に浮かんでしまいました。

17:30-19:00 オープニングセレモニー

19:00-22:00 パネルディスカッション「女性、先住民と教育の非植民地化(decolonization)」

パネラーは、以下の方々でした。

  • ヴィヴィアン(カナダ):ケベック先住民女性の会代表
  • サンドラ(グアテマラ):World March(世界行進)グアテマラ女性の会、渉外担当
  • ヘレナ(アメリカ):World March(世界行進)アメリカ女性の会
  • セリータ(ウルグアイ):ICAE前事務局長
  • アミナタ(ブルキナファソ):ノーマディック田園コミュニティ研修のためのアンダルとパイナル協会 
  • スワンラタ(インド):ニランタール、農村女性識字とエンパワメントプロジェクト補佐
  • モデレーターは、シャーリー(南アフリカ):西ケープ大学教授

パネラーたち
すべて、マイノリティ当事者や当事者支援をする人たちです。
こちらも印象に残った論点をお知らせします。

「過去にされたことをほじくりかえしたいわけではなく、それをふまえてともに私たちの将来を考えていってほしいのです。協働したいのです。歴史の本に描かれているカナダの先住民の記述に初めて子どものころふれたときはショックでした。ネガティブなイメージがたくさんあったのです。けれど、だれも私たちのコミュニティに訪れて、私たちの話を聞こうとはしませんでした。税金は払わないのね?どうしてそんな服を着るの?と外で言われてばかりで、誰も私たちに“出会う”ことをしようとしなかったのです」(ビビアン)

英語を話せることに含まれるヒエラルキーがあるのは事実です。教育に必要かもしれません。しかし、私がインドの地方に行くとヒンディー語で話しますが、その地方の言葉のファシリテーターを伴って通訳をしてもらうと、口が重かった女性たちが、言葉と心を開き始めるのです。つまり、英語やヒンディー語を学んでメインストリームにつながる道を開くことと、その地方の言葉、そしてそれに伴ってもっている彼女たちの知恵にもっと目を向けるべきです」(スワンラタ)

非植民地化は、教育の基礎です。愛国、植民、消費から脱することができて、人間本来を取り戻すためのものです。私たちはもっと命・暮らしに目を向けるべきです。それこそが非植民地化の教育です。先祖から受け継いだ知恵を復活させ、再建し、再認識することが必要なのです」(サンドラ)

会場からのコメントは10人以上に及びました。
最後にモデレーターのシェルリーが結びました。

それでは、これからの数日間、成人教育にとって非植民地化とはどういったことを考えながらぜひ過ごしていってほしいです

また明日へ続きます。
(報告:近藤)

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