2015年11月9日月曜日

デイビッド・セルビーさんのワークショップ「レジリアンスを育む学び:グローバル教育の新しい広がり」

こんにちは。事務局スタッフの八木です。
11月1日(日)、玉川学園の主催でグローバル教育の第一人者、デイビッド・セルビーさんと香川文代さんによる教員研修ワークショップが開催されました。わたしは、1998年にカナダのヴィクトリア大学で開催されたサマーセミナーに参加して以来なので、なんと、17年ぶり!今回は、久しぶりの来日ということで、DEARから星と八木が参加してきました。

参加者は、教員や教育関係者など約50名(うち、DEARの会員の方が4分の1を占めていたような…)。遠くは「広島から」という方もいらっしゃいました。
地球市民を育む学習』(明石書店)、『グローバル・クラスルーム』(明石書店)など、いくつかの著書が翻訳されています。
■Sustainability Frontiers(サステナビリティ・フロンティアーズ)
セルビーさんは現在、「グローバル教育」や「気候変動教育(Climate Change Education/CCED)」を専門とするNGO「サステナビリティ・フロンティアーズ」を立ち上げ、研究や実践を行っています。

はじめに、この「サステナブル(持続可能性)」と「フロンティア(挑戦者として切り拓いていく)」という言葉に込めた思いをお話されました。

まず、「気候変動教育」といっても、「これまでのグローバル教育で扱ってきた開発、人権、社会正義、平和…といった概念を含むものである」とのこと。

そして、「ESD(持続可能な開発のための教育)」の文脈の中で語られる「Development(開発)」については、現状の経済成長・大量消費モデルを「持続」させる「Development」ではなく、経済的に停滞していく(もっとシフトダウンして、手放していく)未来を想定し、それに対する教育が重要であるとのこと。

より望ましい「サステナブル」な未来を追究する、教育の「フロンティア」でありたいとお話されました。
デイビッド・セルビーさん(左)と通訳の香川文代さん(右)
■7つのアクティビティ
10時~16時まで、途中1時間のランチ休憩をはさみながら、「気候変動」と「災害/減災」をテーマにした7つのアクティビティを行い、ふりかえり。そして、実践の場にどう生かすかという意見交換も行いました。
  1. こんな人を探してみよう!気候変動
  2. 20枚の写真から感じる気候変動
  3. 気候変動と未来のシナリオ-カード仕分け(起こる?起こらない?望ましい?望ましくない?)
  4. 災害メッセージ・マッチ
  5. 「安全とレジリアンスのある文化を築くには?」ブレインストーミング&ポスターセッション
  6. どこにラインを引く?(受け入れられる?受け入れられない?効果がある?効果がない?)
  7. ロールプレイ(気候変動に対するネガティブな意見…どう対応する?)
こんな人を探してみよう!シート
3人一組で、簡単なロールプレイをおこなう。
それぞれのアクティビティは、参加型学習の基本的な手法をつかった、とてもシンプルなもの。あれこれ凝ったことをしなくても、「ふりかえり」を十分に行うことで学びが深まることを、改めて実感しました。

また、セルビーさんの穏やかな語り口、言葉の背景にある哲学、参加者からの質問を全体への質問として返すファシリテーションなどから、普段自分がやっているプログラムやファシリテーターとしての態度を見つめ直す機会となりました。印象に残ったことを、いくつかご紹介します。

■感情(emotion)を尊重する
今回は特にセルビーさんの「発問」に注目していたのですが、例えば…
「活動中に、わき起こってきたきた感情はありましたか?」
「どの写真を観て、怒りを感じましたか?」
「つよい感情を引き起こした写真や言葉はありましたか?」
「ここに出てくる子どもになってみたら、どんな気持ちがするでしょう?」
などなど、「気持ち」に目を向け、言葉にする「発問」がたくさんありました。

頭で理解していても、感情が伴わないと行動に結びつかない。だから“感情に基づく学び”は大切」とのこと。

ちょうど、前々日に開催していた「ソーシャル・アクションクラス」の第2回目でも同様に、「共感」や「ヒューマンストーリー」の重要性が語られていたことを思い出しました。

■未来は、現在によって決まる
アクティビティの中には、いくつか「未来」に起こりそうなことや、「未来」を想定したものについて話し合う場面がありました。作業をしながら私たちは「今は○○だけど、15年後には普通になっているかもね」とか、「これは、何年経っても受け入れられないんじゃないか」とか、あれこれ話し合いました。

セルビーさん曰く、「未来の様々なシナリオを考えることで、自分の視点や価値観を見つめ、明らかにすることができる」「未来についての予想は、実は、今の視点や価値観に基づく判断によるもの。未来というよりも、実際には現在のことについて話し合っているのです」…たしかに。

「望ましくはないけれど、起こりそうな未来の事柄について、今、何ができるか」と、学習者に問いかけて話し合ってみるのも面白そうです。

■社会・経済・文化的な視点から
気候変動や災害といったテーマは、「科学者(専門家)の領域」と考えられる傾向にあるけれど、それだけではなく、災害リスクは社会のキャパシティ(社会的・経済的・文化的な側面)によるとのお話がありました。

災害・減災教育の5つの次元
  1. 自然災害の科学やしくみについて理解する。
  2. 安全対策について学ぶ、練習する(=防災訓練のようなもの)。
  3. 出来事(hazard)が災害になるしくみ(=社会的・経済的背景)を理解する。
  4. レジリアンス(社会の復元・回復力)の築き方を理解する。
  5. 安全とレジリアンスの文化を築く。
例えば、社会の中でより脆弱な存在は、なにかの出来事(hazard)があった時、より大きなダメージを負いやすい。だから、教育や識字率、森林率、貧困、格差、経済のしくみなど、「ある出来事が災害になるしくみ」を理解することが大切、とのこと。

ある参加者から、「なぜ、減災のことをグローバル教育で扱うのですか?」との質問があり、セルビーさんは「災害によるリスクや影響は、社会・開発のあり方と関連しています。例えば、森林が開発されるなど、環境が破壊されることで、より災害リスクは高まります。より貧困な状態にある人、教育の機会を奪われた人は、より大きなリスクにさらされるので、人権と減災には関係があります。災害によって、破壊されてしまう社会はサステナブルではありません。災害教育は(上記の)次元の1や2で終わっていませんか?どれだけ、社会的・経済的な背景に踏み込めているでしょうか?」とこたえました。

東日本大震災では、障害を持つ人や高齢者が多く亡くなったという事実や、避難所での女性への暴力が発生したということ。また、常総の水害では、日系ブラジル人コミュニティが、より困難な状況に置かれている…といったことを思い出しました。

■レジリアンスとは? bounce back "better"
とっても日本語にしずらい「レジリアンス(復元・回復力)」とはどんなものか?セルビーさんは、子どもに分かりやすく説明するには…といって、黄色いゴムボールを取り出し、ぎゅっと握って、元に戻る弾力性を見せました。

「でも、実際は、元に戻る(bounce back/バウンス・バック)だけではない。災害の場合は、以前とまったく同じ姿に戻らないし、同じに戻すことを目指すより、よりよく戻る(bounce back better)社会を望みたい」とのこと。

冒頭でも、「Development(開発)」について懐疑的である、との言葉がありましたが、「よりサステナブルな方向にbounce backする」ような「安全とレジリアンスの文化を築く」ことを考えましょう、という提案でした。

わたしはこの言葉を聞きながら、原発事故のことを考えずにはいられませんでした。テクノロジーの粋を集めた原発。福島での事故の後、汚染された土地や空気も、人びとの暮らしも「元に戻る」ことはなく、また「よりよく戻る(bounce back better)」可能性も見えません。

例えば、DEARでも教材を出している「パーム油=アブラヤシ・プランテーション」の開発。今、大規模な火災が発生していますが、どう「よりよく戻る(bounce back better)」ことができるでしょう‥?

「安全とレジリアンスの文化を築く」には?それは、まさに開発と人権、環境といったことに取り組むことなのだと思いました。

※教材のいくつかは「サステナビリティ・フロンティアーズ」のLearning ActivitiesページLibraryページから、ダウンロードできます。
(報告:八木)

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