都立北園高校でワークショップ「ザ・パーム油劇場」

1月29日(水)に、東京都立北園高校で「身近なものから世界とのつながりを知るワークショップ」を開催しました。

北園高校では「信州北園プロジェクト」という、信州大学や長野県のNPO法人や自治協議会などと協力した環境学習やキャリア教育に取り組んでいます。「森林保全活動とつなげたい」という先生の想いから、「身近なもの=パーム油」を切り口に、教材『パーム油のはなし』をアレンジして80分の授業を実施しました。

体育館に集まった生徒たち。はじめのクイズから元気な声が出ていました。

参加者はなんと1年生8クラス全員の320人!
この人数で「参加型」でやるのはどうしたらいいのだろう…とずいぶん悩み、プランテーション・ウォッチから4人のメンバー(飯沼さん、坂本さん、相良さん、中司さん)に来てもらい、DEARからも3名(ボランティアの滝本さん、スタッフの岩岡・八木)の合計7名で行ってきました。
※かなり特別なことで、普段はこの規模では実施していません。


事前に別室でリハーサルをしました。イラストや名札はDEARのボランティアさんたちによる力作。

モノや写真をつかったクイズやワークで「パーム油」をめぐる事柄を押さえた後は、メインとなる「パーム油劇場」です!

ステージ上に並んだ6名の役者(わたしたち)が、それぞれの主張を訴えました。熱のこもった演技に、体育館は静まり返り、生徒たちはメモを取りながら展開を見守りました。
  • アナスさん(マレーシアの連邦土地開発庁勤務)
  • アロキアムさん(プランテーション労働者)
  • チンさん(プランテーション経営者)
  • 富田ゆりさん(日本の合成洗剤メーカー社員)
  • 奥田美穂さん(日本の消費者)
  • オラン(マレーシアの熱帯雨林に暮らすオランウータン)
それぞれの主張を繰り広げる5人と1頭。生徒からは「寸劇がおもしろかった!」「実際の人々の意見のように聞くことができた。他人事と思わずしっかり受け止めていきたい」との声がありました。

芝居の後半は「世界ではパーム油の需要が増えている。プランテーションの拡大に賛成?反対?それとも…?」と6名に問いかけ、それぞれの立場からアドリブで意見を述べてもらいました。

「消費者は安い油を求めている。農園拡大は世界のニーズに応えることだ」とアナスさんやチンさん。「農園の中にせめて中学校をつくってほしい。わたしは12歳のころから働いているんです」というアロキアムさん。「正直、そんなこと考えられない。毎日の生活が忙しい」という日本の消費者。それぞれの意見は平行線をたどります。

最後にオランが「この地球は人間だけのものじゃないはずだよ。森を壊すことは、回りまわって自分の首をしめることになるんじゃないかな…」とつぶやいて、お芝居は終わりました。

「オラン君役の方が、オラン君を大事そうになでていたり、見つめたりしているのをみてほっこりした」という生徒の感想もありました。

その後、生徒たちは3~4人のグループになり、ワークシートに記入した以下のポイントを元に話し合いました。
  • 6人(頭)の中で、あなたが一番共感したのは誰?その理由は?
  • 6人(頭)の中で、あなたが一番共感できなかったのは誰?その理由は?
  • アブラヤシ・プランテーションの開発にあなた自身は賛成?反対?それとも…?
「賛成の人も反対の人も、それぞれ生活に関わる大きな理由があって、難しい~!」「自分は奥田さんと同じ立場なのに、なんでか奥田さんに共感できない…」「誰の意見も分かる~」などなど、ジレンマを感じながら、さまざまな意見が出ていました。


ふりかえりシートから生徒の声をご紹介します(抜粋)。
  • 今回のように答えのない問いは多くあり、その都度どの立場に立って考えるのか判断しなくてはならない。その時に「~の立場はダメだ!」「~は間違ってる!」と安易に言わないことが大切だと思った。
  • 消費者としては安く買いたいのが本音。
  • パーム油以外には、どんなものがあるのだろう。ほかの製品のことももっと知りたい。
  • 知らない、興味ない、というのは一番よくないと思った。身近なモノでも調べてみたい。
  • 豊かな生活は不公平な扱いをされている人によって成り立っていると思った。
  • 人間が「よりよい」ものをつくるとき、自然環境が「より悪い」事態になっていることを改めて知った。
  • 資本主義が限界を迎えていると思った。根本的な考えを変えなければ、もう止まらない。だが、現在の資本主義よりよい考え方が存在しないのでどうしたら良いのか。
先生によると、その後の授業の中でもこのワークショップのことが話題にのぼることがあるそうです。生徒たちの関心や学びたいことは、教科の枠を超えて広がっていくものですね。

ある生徒は「いつも『得する人』の方ばかり見てしまっていることに気づいた。この経験を核にして物事を見ていきたい」と書いていました。より弱い立場から、「損をさせられている」側から社会を見てみること、大切ですね。生徒のみなさん、先生たち、ありがとうございました。

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