大学院の留学生と「Peace Communication」ワークショップ(全3回)

こんにちは。
DEARボランティアの小口(こぐち)です。現在、コロンビア大学大学院で国際教育開発学を専攻しています。7月からDEARでボランティアを始め、夏季休暇の間、オンラインのワークショップでのお手伝いなどをしています。

今回DEARは「社会問題に関する教育コンテンツの作り方を学ぶために、開発教育の教材とその作り方を紹介して欲しい」というasobot inc.(株式会社アソボット)さんからのご依頼により、早稲田大学・大学院の留学生向けの講座「Peace Communication(ピース・コミュニケーション)」で、3回のワークショップを行いました。アジアを中心に各国から35名の留学生が自国または日本から受講していました。

まずは入念な打ち合わせから

DEARとしては元々日本語で作られた教材を英語で、かつ、オンライン講座で行うということを聞き、自分も期待と不安が入り混じった気持ちでした。

まず、今回はZoomを利用した授業ということで、画面共有やブレイクアウトセッションなどの様々な機能を速やかに行えるよう、アソボットさんとの入念な打ち合わせから始まりました。

教材体験→持続可能な社会→教材づくりのポイント

第1回目のスマホを題材とした授業では、自分たちの日常において欠かせないスマートフォンの原料であるタンタルがアフリカのコンゴ民主共和国で取れること、そして、その採掘過程で人や動物が危険な目にさらされていることについて、学生たちはショックを受けていました。また、「私たちには何ができるかさらに知りたい」ととても強い関心を寄せてくれました。

使用教材:『スマホから考える世界・わたし・SDGs』(DEAR、2018)

第2回目の授業では、「持続可能な社会」について考えてもらうために、写真を見て、コンパス分析で疑問を出し合ったり、豊かな社会に必要だと思う条件についてディスカッションをしたり。すると、自分の思う豊かな社会に必要な条件と、他人が思う条件が違うことから、面白い議論が広まりました。銃規制や、環境問題、表現の自由など、現在、まさに話題となっているトピックで、普段から考えていることだったようで、議論がヒートアップしました。

今回は自分が思う条件を共有するだけでしたが、ひとつに決めるのはいかに大変か実感できたのではないでしょうか。持続可能な社会を誰とどのように作っていくのか、がこれから問われているんだと思います。

使用教材:『豊かさと開発』(DEAR、2016)
使用教材:『豊かさと開発』(DEAR、2016)

第3回目の授業は、DEARでの教材づくりの流れやポイントの説明をしました。今回の講座の主旨でもあります。学生からは、教材づくりでどのようなメディアを活用するとよいのか、という質問があり、SNSなどのソーシャルメディアも教材づくりの情報源となりうるが、情報元を確認して使用すること、複数の情報源にあたることが重要であることが話されました。

そこで、Black  Lives Matter(BLM: 黒人に対する暴力と社会システム全体に広がる人種差別の根絶を訴える人権運動。和訳では「黒人の命は大切だ」となる)運動がSNSを中心に広がり、SNSが新しい学びのプラットフォームになったことが話題になりました。

3回を通して、スタッフとして参加させてもらい、始める前は緊張や不安の気持ちでいっぱいであったのに対し、期待以上に学生、アソボットさん、そしてDEARのスタッフさんとつながりを感じられる講座となりました。

「ディスカッションが楽しい」

特に今回の講座を通して一番嬉しかったことは、学生が「ディスカッションが楽しい」と言ってくれたことです。

ICTを活用した授業において、ビデオ配信等だと一方的な授業になってしまい、先生中心方授業になってしまう、という開発教育においては致命的な懸念点があります。

それに加え、Zoomだと、対面でないことや自分の部屋で授業を行なっていることから、集中力も切れやすいので、今まで以上に先生側の工夫が必要とされています。

しかし、今回の講座で、学生が「ディスカッションが楽しい」と言ってくれたことから、ICTを活用した授業開発の可能性を感じました。

例えば、Zoomのブレイクアウトルームや投票機能を有効活用すると、楽しい学習者中心型の授業ができます。特に従来の授業に比べて、ブレイクアウトルームでは、先生や周りの学生の目を気にせずに、親密な空間でディスカッションができるので、学生がより生き生きと話していた気がしました。

コロナを通して、日本の教育においてのICT活用等への変化の鈍さを痛感しました。

それと同時に、今は教育者たちがお互いアイディアやスキルを共有し、助け合いながら、ICTの活用に自信をつけられるときでもあります。

そのような中今回の講座は、ICTを活用した学習者中心型の授業の可能性をさらに追求し、これからもより楽しい開発教育をより多くの人に届けたい、と前向きに思える体験でした。(報告:小口)

※追記:教材づくりについては『NGOの教材づくりアイデアブック』(DEAR、2020、無料ダウンロード)も参考にどうぞ。

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