こんにちは。ファシリテーション研究会メンバーの楢府(ならふ)です。
先週に続き、10月4日(日)に「開発教育ファシリテーション講座2020」第2回を開催しました。
第2回は、「開発教育のファシリテーション」について考えました。最初に、開発教育のロングセラーである「パーム油のはなし」のワークショップを行いました。
参加者には、お菓子のパッケージを持ってきてもらいました。その原材料の多くに植物油脂が表記されていますが、パーム油という言葉はありません。
対面のワークショップの場合はみんなでパッケージの原材料表示をチェック! |
この見えない油の現状をクイズや写真で確認したのち、パーム油をつくるための「農園開発計画についての関係者会議」のロールプレイを行いました。
政府関係者、農園経営者とその労働者、熱帯雨林に住むオランウータン、日本の企業や消費者と立場の違う人々が意見を述べました。
その後、ワークショップ全体の振り返りをしました。
授業などで実践した経験などとも重なった振り返りとなりました。
- 誰が悪いというよりも無関心であることが問題。
- 授業を受けた生徒の気持ちが分った気がする。知れば知るほどモヤモヤしていて、そのモヤモヤが深い。
- 何かしなければならないと思いますが、実際には何もできていない。
- インプットだけでなく、共有することはとても良いと思う。答えが一つではないが、他の人の話を聞いたりすることで、知識の整理ができる。
- 自分の生活との関連は重要だと思う。自分がファシリテーターになった時に、そういう声がけができるとよいな。
対面でのワークショップでは、グループに分かれて一人一役を演じることが多かったのですが、今回はあらかじめお願いしておいた方に演じてもらい、意見を聞いた後、グループに分かれて意見交換をしました。一部を紹介します。
- 自分は自然を大切にとだけ思っていたが、いろいろな立場の話を聞くと難しい。
- 消費国は生産国に関して無関心すぎる。
- 意見を言うことはできるが、実際に何をするか、行動できるかは難しい。
- パーム油は環境や人権の問題があることを明記していくことで消費者も関心がある人が増えていくのではないか。
休憩をはさんで、開発問題を扱う際に重要なこと、難しいことをさらに話し合っていきました。
- 参加者一人一人が、答えがないということではなく、各自がどう決めるのか、を考えることが重要。
- 学びを行動にという話しがあったが、学びは学びでいいのではないか。あんまり行動することばかり強調されるとよけいにしんどくなる。学ぶことが楽しい、ということで終わることが子どもたちにとっては大切なのではないか。
- さまざまな問題を自分事として考えることができているのか。
- なんかしないといけないと思うが、なにもできないと考えることが多い。
- きれい事で終わってほしくない。自分たちとの生活と関連付けなければ。
- かわいそう、日本に生まれてよかった、助けなければといった感想が出てくる。「豊かさ」は何だろう?日本にも様々な問題がある。
- 自分が気にしていることや大切に思うことと開発の問題がつながると自分事になるのでは。
- 個人でやるのではなく、やれる環境を校内やそれぞれの場で作る。成功体験がとても大事。
その後、研究会メンバーであり、元代表理事でもある上條さんから、以下についてお話しいただきました。
- DEARが重要だと考えてきた開発(人間開発、社会開発、参加型開発、内発的発展)
- 「参加」の多面的な意味
- 開発の捉え方の変化による、開発教育の目的の変化
- 開発問題を捉える上で不可欠な「植民地と抑圧の歴史認識」「開発の意思決定」「相互依存性」
- 開発教育の実践の場とファシリテーションの多様性
最後に開発教育のファシリテーションをする上での大切なことと自分の課題、今後のチャレンジについて話し合いました。
【大切なこと】
- “日常”に気づかせる視点、その問いかけ、問い直し。
- 自由に発言できる雰囲気を作るために、学習者間の人間関係を構築する。互いを尊重し、傾聴する態度を養う。
- 多様な考えや価値観を引き出し、受け止めること。
【今後のチャレンジ】
- 大人が喜ぶ感想を超えた意見を促せるようにしたい。
- 「豊かさ」や「幸せ」とは何かを学習者一人一人が考え、自分を見つめるきっかけとなる実践をしていきたい。
- オルタナティブな視点をもつこと。待つことと一緒に学ぶという姿勢の徹底。参加できていない人がいない公正な場づくり。
答えがひとつではない、開発教育のファシリテーション。参加者のみなさんからは、悩みながらも前回よりもさらに深まった振り返りが聞かれました。次回も楽しみです!
(報告:楢府)
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