開発教育ファシリテーション講座2020 第3回「傾聴とファシリテーション:感情・ニーズ・価値観を聴く」

こんにちは。ファシリテーション研究会メンバーの山中です。
10月11日(日)に「開発教育ファシリテーション講座 2020」第3回を開催しました。

第3回は、気持ちやニーズを聴くこと、質問を考えること、傾聴の練習をすることで、自分の聴く姿勢をふり返り、傾聴とファシリテーションの関係について考えました。 

「怒りの火山」のワークは『子どもとできる創造的な対立解決』に収録しています(写真は教材体験フェスタ2016の様子)

最初の「怒りを振り返ってみよう!」では、自分が怒りを感じたこと、イライラしたことをふり返り、そのときどんな感じだったか、満たされなかったニーズは何かについてグループで共有したあと、「怒りの火山🌋」のワークシートを使って、自分の「怒り」の感情を分析をしました。

そのときの参加者の皆さんの気づきを一部、紹介します。

  • 満たされないニーズ=安心安全の場に必要な要素なんだ。
  • 「共感・理解・承認を得たかった」という事実を深められた。
  • 他者への怒りや自分に対する怒りがある。自分にはあまり関係がないと感じたことに対しての怒りは持続はしない。

怒りの背景には満たされていないニーズがあります。
まずは自分自身のニーズや怒りの傾向に気づくこと。同時に相手にも怒りの火山があるということを意識することが大切なことなのでしょう。態度や行動の裏にある気持ちやニーズに気づき、確認することで自分と相手への理解が深まるのではないのでしょうか。


次は「質問をしてみよう!」という「質問の練習」でした。
参加者の皆さんには「自分が授業やワークショップで使えそうな新聞記事」を事前に一つ選んできてもらっていました。グループの一人がその記事について紹介し、グループの他のメンバーが、「なぜ、その記事を選んだの?」「どんな意図があるの?」と質問しました。

参加者の皆さんからは、
  • 何をきっかけにこの記事を選んだのか? 背景のところは、怒りのワークとつながっているような気がする。ニーズが自分の関心とつながっている。怒りのワークともつながっているのかも。
  • 質問して、改めてそうだな、と気づいた。
  • 何がきっかけにそこに関心を持ったのかについて質問することで、日々のこと、気持ちの背景に寄り添うことができるのかも。
  • 質問だけでなく、「###」ですね、と言われて、気づきがあった。
という声がある反面、
  • 相手の気持ちや価値観について質問することは、相手の背景を知らないと難しい。
  • 難しかった。経験談であれば聞きやすいが、自分からいったん切りはなされたもの、本質を問いかける質問は大変。
  • 難しい。大切にしていることを引き出すための質問、というのを理解するのに時間がかかった。
  • 今まで掘り下げた経験がない相手は難しい。
など、相手が自分自身の価値観に気づけるように質問をすることの難しさを改めて感じた方もいらっしゃいました。


最後は「傾聴(三者リスニング)」のワーク。3人グループで、話す役・聴く役・監察役の役割になり、パラフレーズの練習でした。

傾聴のワークを通して、
  • 傾聴してパラフレージングを行うことで、話し手と聴き手の双方での理解が深まり、共感が持てるようになる。
  • 傾聴における確認(パラフレーズ)をすることでも相手に気づきが得られ、話が進めてられていく。ふだんのワークでは、常に頭のどこかで次の質問や展開を考えていて、しっかり聴くことができていなかったり、十分に参加者の意見に耳を傾けずに進めていたように思う。十分に聴く時間の確保がファシリテーションにつながっていくのではないか。 その時の気持ちを聴くことで、具体的なイメージが想起され、その時の状況だけでなく関心や背景まで聴き出しやすくなる。 ネガティブな感情の裏側には自分が大切にしたいことや必要としていることが隠れている。
  • 参加者が安心して参加できる場作りにつながる。相手の思いを聴く、受け止める姿勢を示すことで相手が自分の思いを語りやすくなる、また、開発教育のワークショップをした時にグループ内で意見が停滞している時にもグループの話を聴くことで、なぜこの問題について考えているのか原点に帰れるのではないかと感じた。
などなど、質問、確認、共感などを丁寧に心がけることは、相手の枠組みで理解すること、そしてそのような関係の中から、理解されているという安心感が生まれるということ
を感じていただけたようです。

最後に、印象に残った参加者の方の感想を紹介します。

「相手がどう考えているか知りたいから話す」というのが印象的であった。ただ聴く・頷く・オウム返しのパラフレーズでは、ロボットに話しているのとあまり変わらないのでは?というのも共感できた。オウム返しではなく、聴き手のフィルターを通して、自分の考えを再認識でき、また聴き手の質問によって、自分の考えが深まることもあるなと思った。
 
私たちは常に表面的なものに目を向けがちになっているのかもしれません。そしてそのことは、他者との関係において改めて気づけることなのではないでしょうか。だからこそ、じっくり自分をふり返ることが大切なのかもしれません。

傾聴をするときにも、自分の感情に目を向けることが大切です。そして、自分自身が何に関心を持ち、どんな価値観で他者を、社会を見ているのかということに気づくことがファシリテーターとして重要なのかもしれませんね。(山中信幸)

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