機関誌オンラインcafé「気候危機と私たち」

こんにちは。DEARスタッフの岩岡です。

6月23日(水)夜に「機関誌オンラインcafé」を開催しました。

DEARが毎年発行している機関誌『開発教育』を片手に、自由に語り合う会として、2019年より企画しているこのイベント。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、昨年からはオンラインにて開催をしています(昨年の様子はこちら)。


今回は、機関誌67号の特集「気候危機と私たち」をテーマに開催しました。参加者は、学校教員や会社員の方の他に、特集に寄稿してくださった三田善雄さんも参加され、少人数ではありましたがじっくりと話をしました。

最初に自己紹介をして、今回の特集の中で印象に残ったことや面白かったこと、勉強になったことなどを一人ずつ共有していきました。

  • DEARの気候変動教材でカバーしきれていない事実が、科学者の視点からまとめられている。
  • ケンタロさんをインタビューした高校生と大学生の二人が面白かった。
  • 田中さんの論文で、開発教育の視点から気候変動を読み解いた後に、江守さんの原稿を読むと事実が裏付けされ、より理解が深まった。
  • 三田さんの論文によって、開発って何だろう?ということを改めて考えさせられた。
  • 「自己変容」という言葉が気になった。自分を変えていくこと、影響を波及していくことに自信がないように感じている。
  • 小さな持続可能性を無視して、より文明化された大きく高度な持続可能性が進められるという状況が、周りにたくさんある。あらゆる地域で起きていることを三田さんの論文を読んで実感した。
  • 羽角さんの論文の中で、市民性や政治に働きかけることが提示されている。問題点は分かるがこれからどうしたらよいのか、もやもやして自分自身も考えた。
  • 学校教育での学びを経て変容は感じるが、実際の社会や地域において、ダブルバインドというか、現実的な理屈で動いていて、自分が学んだこととは違うように感じている。その中でやっていないといけない、そのあたりの接続が難しいと改めて感じる。
  • 気候変動対策を考える時、政策を変えないといけないのに、心がけの問題に留めておくようなことが、色々なことに共通している。個々の取り組みよりも、国が大きく変わることで起こる影響を考慮して働きかけていく必要がある。
  • 学校というコミュニティにおいては、子どもは周囲の環境や大人の背中、システムから影響を受けることが大きい。やっぱり教育は教えることだけではなく、理念を追求して全体的に(ホールスクールで)取り組むことが理想だと思った。
  • Climate Justice(気候正義)という言葉を初めて知った。「公正を実現することが正義だ」とあるが、そこに揺らぎはないのか?と疑問を持っていた。でも、止めなくてはいけないことは正義なのだ、と機関誌を通して思うようになった。

一つ一つの論文が個性的で、様々な視点から気づきや学びが共有されました。それらを引き取りながら、三田さんより、寄稿後1年ほど経った今、どのような状況にあるのか説明がありました。

<三田さんのお話し>

「コロナ禍により活動は休止していたが、事業者から環境影響評価に入りたいと連絡があり、2020年8月から立ち上げなおした。もう一度各町内会の会長とともに反対決議書を作り直し、現状の施策を読み直し、専門家などによる勉強会を企画し、事業者や行政機関等への陳情も実施して半年が経った。年度末に事業者が岡山事業所を閉鎖するとの連絡があり、建設計画はこう着状態にある。

活動をする中で、反対活動に従事してきた人たちとは、住民が地域から目をそらしてきたことが課題だということを共有してきた。なので、自分たちが住む地域の生態系や災害の歴史などを改めて勉強し、何が問題なのかということを、自分たちが自分たちの言葉で語るプログラムも企画実施している

今年度新たに、地元の小学校の地域学校協働活動推進員となった。ホール・インスティチューション・アプローチのように、この活動・学習経験を足がかりに、地域全体での学びあいのプログラムづくりを検討しながら、次の世代に伝えていきたい

地域に住む人々は個性があり、協力を募りながらも、次の世代に上から目線ではなく、自分たちの省察や批判も込めながら一緒に学ぶことができれば、このピンチをチャンスに変えられることもできるのでは、と思っている」

(参考動画)

三田さんのお話を聞いて、一人ひとり感じたことや疑問を共有していきました。

  • メガソーラーを設置するには、広大な土地が必要で、岡山のような日本の典型的な里山よりは、もっと大規模に設置するのが効率的である。日本の再生可能エネルギーはコストが高くなっている。それよりは、エネルギー消費量を減らしていく必要がある。
  • 地域の課題に取り組む中で大事にしたのは、外敵に歯向かわないようにしたこと。地域の外の企業を攻撃しても、地域には何も残らないし、地域が分断される。反対運動をするには、外へ歯向かうのではなく、地域や自分たちとどう向き合うかが試される。
  • なぜこういう問題が起こっているのか?を振り返るプロセスが大切。開発教育でも省察や振り返りが大事にされている。

そして、気候変動対策や気候変動に関する教育について、話は進みました。

  • 大量生産・廃棄の社会構造を変えていく必要がある。日本は大量に質の良い商品が生産されている反面、値段が安い。人件費が高ければ、生産量も減り、廃棄も減る。それでも、自分の生活をよくするために声を上げることはあまりしない。賃金を上げれば購買力も上がるはずだが、自分たちの努力不足や自己責任と捉えられがちである。
  • 企業文化の在り方を変えていかないと、大幅なCO2削減は見込めない。コンビニなどのサービス業が、経済や社会に与える影響は大きい。
  • 運動と教育が離れてしまっているように感じている。問題の背景にある構造が見えにくくなっていて、おかしいとすら思えない。他者性を喪失すると相対化できず、自分が当事者なのか、何が問題なのかを捉えることが難しくなってしまう。自分が置かれている環境や社会の仕組みに批判的に切り込んでいくには、他者性を持つことは大切だが、残念ながら日本の教育では十分に扱われていない。
  • 自己肯定感が失われるような教育が施され、個人がディスエンパワメントされている。教室の中ですら自信をもって自分の意見を言えないのであれば、社会に対して声を上げられないのは当然で、運動にもつながっていかない。
  • 問題解決の方法として、自分でどうにかする、もしくは行政に頼む、という二択に陥りがち。日本は行政に対する信頼が厚い一方で、誰かと一緒に取り組もう、組織をつくろうという私と公の間にある選択肢が生まれにくいと感じている。民主主義の創り方に通ずる。

参加者一人ひとりの経験や考えが少しずつ繋がっていきながら、それぞれが考えをゆっくりじっくりと巡らせて話し合っていくことができた時間でした。

こういった話し合いをメインとするイベントは、DEARでは珍しいですが、インプットしたことをじっくり嚙み砕いてアウトプットして、さらに新しい視点を持ち帰るプロセスがとても貴重だな、と感じました。

ご参加くださった皆さん、ありがとうございました!
(報告:岩岡由季子)

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