「DEARカレッジ」第2回「気候変動とエネルギー」開催レポート

DEARカレッジスタッフの本山です。

第2回は国際環境NGO FoE Japanの高橋英恵さんをお迎えしました。

高橋さんは自己紹介の中で、「世界の国々のなかで貧しい国はなぜ貧しいままなのか」との問題意識を抱いていたと言います。大学では、エコロジー思想に出会い平和学を学びました。

卒業後、ビジネスも体験し、FoE Japanに入りました。根本には「誰かの犠牲の上に立つ社会を変えたい」という考えがあります。

運営メンバーと講師の高橋さん(中央)

ディスカッション1「気候正義と聞いてイメージすることは?」

グループに分かれて自己紹介を行い、「気候正義と聞いてイメージすることは何でしょうか?」との問いをもとに話し合いました。

以下のような意見が出されました(チャットより一部抜粋)。

  • 若い世代が関心を持っているという印象。
  • 絶対に地球温暖化を止めないと未来はない。
  • 国家間の格差、世代間格差、水没の危機にある国家とその原因をつくりだしている国々。
  • 誰にとっての正義なのか。立場によって異なるのか。
  • 強いイメージがあり、戦う姿勢を感じる。

高橋さんのレクチャー

グループでの交流の後、高橋さんのレクチャーが始まりました。
スライドが40枚も用意してあり、40分のお話はあっという間に過ぎました。わたしが特に印象に残ったのは、次のことです。

Climate Justice-気候正義-とは何か

  • 温室効果ガスを最も排出していない人々が、気候変動の影響を最も受けている。
  • 世界で裕福な10%の人々が、世界の温室効果ガスの52%を排出している。
  • 気候変動は、単に科学や環境の問題ではない。気候正義とは、気候変動を引き起こしてきた、自然や人間の搾取に基づく社会の仕組みを、社会の公平性を実現する形で変えていこうとする考え方。気候変動はCO2の問題ではなく、もはや人権問題。

日本の気候正義実現に向けた道筋と課題

  • 製造業が盛んな国(例えば中国)は、温室効果ガスをたくさん出す。その製造業で造られた製品を輸入している国(例えばアメリカ、ヨーロッパ、日本)はその製品がつくられたときに出された温室効果ガスを実質的には出していることになる。
  • 日本は全国で160基以上の石炭火力発電所が運転中である。高効率でも天然ガスの2倍の排出量と言われている。歴史的責任に基づいた、日本の排出量の削減が求められる。また、国際支援の一環として、日本は石炭火力を輸出しており、まだ建てられていない発電所がインドネシア、バングラデシュ、ベトナムで計画されている。
  • 原発は気候変動対策にならない。放射性廃棄物の処理ができずウラン採掘から廃棄に至るまで労働者は被爆を免れない。原発事故により年々コストが上がっており、新設の場合は20年以上もかかり気候変動対策に間に合わない。過疎地の住民が原発事故の被害を受け、都市部の住民は恩恵を受ける。

持続可能な社会を実現するには?
  • 目指すべきは「小規模」「分散」「地域調達」の自然エネルギー。そして、最も重要なのは、地域の人がそれを受け入れられるかどうか。

ディスカッション2

再びグループに分かれてレクチャーの感想と質問について話し、以下のような意見が出されました(一部抜粋)。
  • 気候マーチなどの若者の参加度が日本は海外と比べると低い。それはなぜなのか。
  • 石炭火力発電所が日本でまだつくられているとは知らなかった。無知は怖い。その意味では教育が大切。自分事にするにはどのような学びがあるとよいのか。
  • 再生可能エネルギーへの完全転換という未来は現実的なのでしょうか。
  • 「私たちの社会を見直してみる」ということがすごくストンと落ちました。やっぱりもっと社会構造を変える事について、子どもたちともしていかないと…と思いました。
グループでのディスカッションを受けて、高橋さんからコメントをいただきました。
  • 気候マーチへの日本の若者の参加率は低い。とはいえ、2016年のときは若者の参加はゼロだったが、2018年9月20日は東京だけで2,800人。今回は5,000人。増えている。興味があるひととない人が分かれているのは事実。一方で、人口の3.5%が社会問題に対して運動すれば変わるというデータもある。
  • 運動に参加することで就活が不利になるという懸念あるが、アクティブな学生をとるという企業も出てきている。学生側から環境に取り組む企業を集めて説明会をする取り組みがある。
  • 経済産業省によると再生可能エネルギーはいまの需要の2倍の発電量の可能性があるとのことだが、それをすると、山には太陽光発電、海には洋上風力発電で固めることになってしまう。つくる人とつかう人を一致させることが大事。自由学園では再生可能エネルギーを学校でつくりつかっている。千葉商科大学でも再生可能エネルギーの100%利用を目指している。大学で持続可能性を考えていないことはリスクでもあり、今後、学生が選ぶ基準にもなっていくのではないか。
  • 最後に、私(高橋)もスピーチをした学生と同じ思いです(後掲)。なぜ、人の犠牲になりたつ社会に生まれてしまったのかと思うこともある。
  • 自分の身体感覚を信じること。自分を通して物事を感じること。留学中にサイクリングをしていて、理性ではなく感覚で風が気持ちいい、と感じた。身体感覚がひらかれていることは大切なことだと感じた。

わたしの感想

高橋さんのレクチャーに出てきた学生さんのスピーチを紹介します。

2021年の4月の金曜日、国会前で60名ほどの若者が集まり、気候変動対策のため温暖化ガスの引き下げ目標を実効的にするためスピーチをしていました。以下は、仙台から参加してきた学生のスピーチです。

「日々、私は自分が生きていてよいのかを考えています。自分がこのシステムで生きている中で殺している人がたくさんいる。日本の中でもそうだし、アフリカの歴史的に搾取されてきた人たちの子どもたち…。こんなシステムの中で、なんで自分は生きていかなきゃならないのだろうと日々思っています」

「そういうことに気づける勉強ができたのも私の特権です。だから私は日々生きていくのに精一杯の大人の人たちを責める気には私にはなれません。でももうちょっと出来ることがあるのではないかと思います。仕事を1日休み、何万人もの人が集まれば、気候変動を止められる運動になる。歴史的にも重要な権利を獲得してきた人たちは座り込みとかデモとかをしてきた。私たちは気候変動をなくすハッシュタグとかこのぐらいの行動で気候変動がなくなるとは思っていません。私たちはこのままで生きているのが辛いというのが根底にあって…」

私もこの学生たちと共にあります。
(報告:本山)

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