開発教育ファシリテーション講座2021 第3回「ファシリテーションにおける『問い』を考える」

こんにちは!開発教育ファシリテーション講座修了生のかとちゃんです。
9月26日(日)に「開発教育ファシリテーション講座 2021」 第3回が開催されました。

2か月にわたる本講座もあっという間に前半が終了。そんな第3回目のテーマは「ファシリテーションにおける『問い』を考える」でした。新聞記事や文章を使って問いづくりをし、さらにその問いをつくり替える練習もあり、盛りだくさんな3時間でした。

もくじ

  • アイスブレイク
  • 「新聞記事からの問いづくり」
  • 「文章からの質問づくり」
  • つくった質問を吟味―“良い質問”を選ぶ
  • ふりかえり

アイスブレイク

アイスブレイク「わたしの1週間」では、この1週間で食べたものの中から、おすすめしたい「美味しいもの」🌰🍙を紹介してもらいました。

オンライン開催ならではの、全国のご当地グルメが紹介されたり、秋の訪れを感じることができたり、食の話を通して雰囲気が一気に和やかになったことを感じました。

「新聞記事からの問いづくり」

最初のワークは、「新聞記事からの問いづくり」でした。

参加者のみなさんには、あらかじめ宿題として動物起源の感染症に関する新聞記事を読んできてもらい、講座内ではその記事に対する「問い」を個人で3つつくるところからワークを開始。その後3人一組のグループに分かれ、Google Jamboard(ジャムボード)の付箋機能を活用してそれぞれの問いを共有し、3人の集まった問いを分類しました。

個人での問いづくりでは記事に対して「もっと知りたい」「疑問に思うこと」を書き出し、グループワークの分類作業では「何についての問いなのか」、という観点から話し合いました。

参加者グループ2のジャムボード

参加者グループ4のジャムボード

他のグループのジャムボードも見比べた上で、参加者からはこんな感想が出ました。
  • 😲自分たちが話し合っていない内容の質問あった。例えばグループ2(写真1)の自然との共生、敬いを忘れていないか、哲学的な問いが面白かった。
  • 😊全体的にみて、似ている質問もあれば違うものもあり、自分では考えつかないものもあって面白い。ひとりひとり違う質問でも、分類すると結局同じことを聞いていたりすることがわかった。
感想の通り、分類できないような他にない発想の問いがあることや、分類すると例えば「ウイルスはどこからくるのか」(写真2左上部)について聞いているが、問いの内容や問い方は各々違うのだということに気づかされるワークでした。

「問い」を書き出し分類してみたことで、各々の着目点や問いの内容、問い方も多様であることが可視化されたように思います。

「文章からの質問づくり」

2つ目のワークでは「文章からの質問づくり」を行いました。

テーマとなった文章「安心・安全(safe)の環境にすることは大切だが、居心地を良くする(comfortable)必要はない」(写真3)について「自分の疑問」や自分がファシリテーターをやる際にその参加者が「考えられる質問」を考えました。

「質問づくり」テーマ文 当日スライド資料より


ここでの質問づくりの最大のポイントは、質問には2種類あり、それは「閉じた質問」なのか、「開いた質問」なのかということでした。

「閉じた質問」とは 【はい】【いいえ】【どこです】 などのように返答が一言で済むような質問です。
例)
・気候危機は深刻ですか?
・パーム油の主な産地はどこですか?

「開いた質問」とは、返答に具体的な説明を必要とする質問です。
例)
・誰が、気候危機をもたらしていますか?
・パームやしの実の収穫はどうやってやるのですか?

2種類の質問があるというポイントに加えて、自分の意見に「~じゃないですか?」、「~ですよね?」というような自分の意見を確認するようなものは疑問文とはしないことをここで確認し、ペアワークへ。個人でつくった質問をグーグルスライドに共有し、「閉じた質問」は「開いた質問」へ、「開いた質問」は「閉じた質問」へと、質問を「つくり変える」作業を行いました。

参加者のみなさんがつくった質問とつくり変えた質問をいくつかご紹介します。
  • 安心安全とは、どういうことですか?(開いた)👉安心安全とは、言いたいことが言えるということですか?(閉じた)
  • 「居心地が良い」とは、どういう状況ですか?(開いた)👉居心地が良いとは、共感してもらえるということですか?(閉じた)
  • 安心・安全の環境を、経験したことがありますか?(閉じた)👉安全の基準の環境の経験は、どのようなものでしたか?(開いた)
  • あなたは、この文章に賛成ですか、反対ですか。(閉じた)👉なぜ、あなたはこの文章に賛成または反対ですか。(開いた)

つくった質問を吟味―“良い質問”を選ぶ

ワークは次のステップへ進み、2組のペアを合わせて4人1グループのグループワークを行いました。内容は、上にあげたような開いた質問・閉じた質問から、「出されたテーマ内容を深めるうえで良い質問をグループで2つ選び、質問を吟味する」ことです。各グループでのよい質問と、その理由を全体で共有しました。

〈グループ1〉
  • 選んだ良い質問:「安心安全はどういう意味ですか」「居心地がいいとはどういう状況ですか」
  • 選んだ理由:その文章を深めるは、正しいかどうかを議論することが必要であると考え、そのためにそれぞれ言葉の定義を確認するのがいいと考えたから。
〈グループ2〉
  • 選んだ良い質問:「居心地がよくなくても発言がしやすいですか?」(時間が足りず、一つ) 
  • 選んだ理由:「居心地をよくする必要がなぜないのか」「居心地の良さは安心に含まれないのか」を閉じた質問にした。居心地がよくないことのデメリットを問うことで、逆に安心安全の具体性を考えたかったから。
〈グループ3〉
  • 選んだ良い質問:「居心地が良いとどのようなメリット・デメリットがあると思うか?/あなたは居心地のよくない状況をデメリットだと思いますか?」「安全の反対である危険とはどのような状態ですか?/身に危険を感じたら危険ですか?」
  • 選んだ理由:開いた質問を閉じた質問につくり変える中で、うまく閉じることができない開いた質問があった。それは考えを深めるには広すぎるため、良い質問ではないと考えたから。つくり変えやすかったものなら深めやすいと思ったから。
〈グループ4〉
  • 選んだ良い質問:「安心安全の基準とは何か」(時間が足りず、一つ)
  • 選んだ理由:グループワークでほかのペアと一緒になり、自分のペアでは出なかった質問だったので、ぜひ聞きたいと思った。
濃厚なグループワークを終え、解説では学習者自身が自分を問えるようになることが開発教育でファシリテーションを行う上での問いの目的であることを確認しました。

「ほしい答えを求める問いになっていないか」
「参加者をレールに乗せて自分の導きたい方向に誘導していないか」
「参加型やっている風ファシリテーションになっていないか」

-途中、ドキッとするような問いかけもありつつ、学習者の中の前提の枠組みを揺さぶる問いによる省察の機会を作ることが、ここで目指したいファシリテーションであるのだと、受け止めることができました。

前提の枠組みを「揺さぶる」問いとは 当日スライド資料より

ふりかえり

第3回の講座のふりかえりで出た参加者の気づきを一部紹介します。
  • 😏問いを開く、閉じるのが難しかった。何が聞きたいのか、漠然としていて、相手に投げてしまっているのは、どうかと。問う目的を問わないといけない。レールにのっけて、という言葉も印象的。相手に問いかけているのか、こっちの都合なのか?当たり前を揺さぶるというプロセスはすごいな、新しい発見。自分の前提が間違っているのではないか。
  • 😊難しかったが、楽しかった。問いは興味・関心があったら聞けると思っていたが、自分の興味・関心にそって聞いていてもだめ。閉じた質問・開いた質問を考えるのは良い悪いではなく、問いを峻別する、磨きをかけていくことができる。質問の精度をあげることができると気づいた。
  • 😓最後は痛い指摘でした、自分の考えが乗ってしまいすぎ、あとは、はい、考えてーとほったらかしていることを反省。
  • 😆開いた質問から閉じた質問にするとき、閉じられないことがあった、吟味できない・できていないから難しいということに気づいた。
最後には、今回の講座を大事な問いをじっくり吟味する出発点・きっかけにしてほしいと、第3回担当のファシリテーターからのメッセージも伝えられました。

次回は第4回 「自分とみんなの参加ー開発問題では避けられない!〈合意形成や意思決定〉プロセスからファシリテーションにおける「問い」を考える」です。10月3日に懇親会を挟み、10月10日に実施予定です。(報告:加藤)

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