第2期DEARカレッジ・SDGs学習のつくりかた(テーマ編)第2回「平和」

こんにちは。

前回に引き続き、ブログを担当させていただきます、大学院生のボランティアスタッフ、氏井紅葉(うじい・もみじ)です!

今回は、オンラインで6月から開催されている「第2期DEARカレッジ SDGs学習のつくりかた(テーマ編)」(全7回)第2回「平和」のレポートです!

プログラム

  1. 自己紹介&アイスブレイク
  2. グループディスカッション(核兵器・平和・戦争)
  3. 講義「平和」講師:川崎哲さん
  4. おわりに-わたしの感想

写真は核兵器禁止条約が採択された時のもの(日本政府は参加しなかった)

1.自己紹介&アイスブレイク 

最初に、自己紹介とアイスブレイクの時間として…

ウクライナ情勢の報道や情報を受けて、「悲しい」「励まされる」「おどろいた」など、15の「気持ち」の中から「わたしの気持ち」に近いものを選び、その理由も考えるワークを行いました。

個人でワークシートを書いたあと、グループに分かれて感想を共有しつつ、ウクライナをめぐる情勢等について思いや意見を共有しました。グループでは、以下のようなお話がありました。

  • ウクライナの市民の本当の声が伝わっていない。
  • 戦争について、賛否両論あるから一概に反対と言えないところが難しい。
  • 日本の報道でマスコミを通じて反戦が出ていない。
  • 軍備について安易な意見が出ている。

2.グループディスカッション

以下のテーマで最初のグループディスカッションに入りました。

「核兵器があることで平和につながる」
「核兵器があることで戦争につながる」
みなさんの考えに近い方を選んでください

ディスカッションを終えた後で、本日の講師である川崎哲さんがこのディスカッションテーマの趣旨を以下のように説明してくださいました。

「核兵器廃絶と世界平和はワンセットで、
平和のシンボルは原爆投下の経験を持つ広島と長崎です。

今回のディスカッションで目を向けてもらいたかったのは、
核兵器があることで戦争がなかったと考える意見は多いのではないかということです。

ウクライナでの戦争を機に軍備を備えようという意見が日本で出たり、
核兵器を持っていいのではないかという意見すらも出てきています。
これは、核兵器があった方が平和になるという意識が潜在的にあることを示しています

今回の講義では、核兵器と平和について考えます。

3.講義「平和」講師:川崎哲さん

今回の講師である、川崎哲さんは、ピースボート共同代表。2017年にノーベル平和賞を受賞した「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」の国際運営委員(2012-14年同共同代表、14年から現職)でもあります。

講義は、現在のウクライナとロシアの問題から入りました。

ウクライナとロシアと核兵器

プーチン大統領が侵攻を行ない、侵攻を開始するや否や「核兵器を使うぞ」という意見を繰り返しています。これは、核保有国が核兵器を使うという威嚇を行っているということです。

「核兵器によって世界の平和が保たれている」という意見がありますが、それは、強国が核兵器を持つことでバランスをとっているという主張があるからです。
しかし、現在、核兵器のある世界で戦争が起きています。

平和を保つのではなく、プーチン大統領のように核兵器を脅すことに使い、核兵器ではない戦争を遂行するための道具として活用しているということが言えます。

そして、現在、核兵器を持つ国々はさらなる戦争の準備をしています。
核兵器がありつつ、戦争が起きている世界があります。

ICANと「核兵器禁止条約」 (2017)

ICANは新しい条約「核兵器禁止条約」 (2017)を作って核兵器を減らすように動いたことで、ノーベル平和賞を受賞しました(第1回締約国会議は、6月21日~23日に行われ、川崎さんも参加されています)。

これは、核兵器を非人道的な兵器として核兵器の廃絶への道筋を定め全面的かつ完全に禁止し核被害者への援助を定めた条約です。

注目するべきは、第1条(禁止)の赤文字の部分です。

第1条(禁止)
締約国は、いかなる場合も以下のことを行わない

a) 核兵器の開発、実験、生産、製造、取得、保有、貯蔵
b, c) 核兵器やその管理の移譲(直接、間接)
d) 核兵器の使用、使用するとの威嚇
e, f) これらの行為をいかなる形でも援助、奨励、勧誘すること
g) 自国内に配置、設置、配備

「これらの行為をいかなる形でも援助、奨励、勧誘すること」とは、他国が核兵器を持っていてもそれを援助・奨励・勧誘することはダメということです。

例えば、アメリカの核兵器で守られているという立場で立つならば、保有を奨励しているため、許される行為ではなく、日本のために使うとなると日本は援助するためそれも許されない、となります。

この条約について以下の疑問が生まれることがあります。

🙄核兵器禁止条約はNPT(米、露、英、仏、中の5か国を「核兵器国」と定め、「核兵器国」以外への核兵器の拡散を防止)と矛盾する?
→NPTは核を無くしていくという意味があるから核兵器禁止条約と矛盾しない

🙄核兵器禁止条約は安全保障を踏まえていない?
→安全保障を踏まえている(どういう被害が出るかに着目している)

🙄核兵器禁止条約は実効性がない?
→この条約ができたことで銀行は核兵器を作っている会社にはお金を貸さないと投資の引き揚げを行っている。
例えば、ハラスメント禁止条約ができると、ハラスメントを訴えやすくなるため、実際にハラスメントが減っていくのと同じで、条約ができれば、抑制されます。
ゆえに、どんなことでも「これは悪だよ」という議論が大事です。

🙄条約や国連は無意味・無力なのか?理想論?条約は破られる?
→このような意見もあるが、国連や国際法を否定してはいけない。国際法を強めるプロセスは進んでいる。

抑止力?

「核兵器を持つことで平和を保てる」という考え方をする人がいますが、以下の観点から考える必要があります。
  • 道徳性(それは正しいことなのか?)
  • 実効性(機能するのか?失敗しないのか?)→例:ウクライナ・ロシア
  • 伝染性(「我も我も」にならないか?)→例:「日本が核を」という考え方はウクライナから伝染している
  • 結果責任(破綻したらどうするのか?)
ICANのメッセージ「核兵器の終わりか、私たちの終わりか。」

講師の川崎さんと

安全保障

安全保障のジレンマ:「自国の安全を高めようと意図した国家の行動が、別の国家に類似の措置を促し、実際には双方とも衝突を欲していないにも関わらず、結果的に衝突に繋がる緊張の増加を生み出してしまう状況」

自分たちの安全のためにとった措置が、他国から「怖い」と思われることもあります。
防衛は攻撃に発展する危険性があり、防衛は脅威になり得ます。
抑止は相手にとって脅威になり、軍拡競争を生み出し、全員にとって脅威となります

戦争を起こさないために、以下を踏まえて議論をする必要があります。
  • 不戦の誓約と信頼(憲法)
  • 軍事力?(防衛?自衛隊?米軍?曖昧にして、抑止力として議論するのは危険)
  • 国連と国際法
  • 外交的解決
ウクライナ戦争の煽りで、軍事力だけ突出して、そこにしか頼ることできないような状況を生み出しています。しかし、軍事以外の安全保障の手段もあります。

非核兵器地帯

非核兵器地帯:地域がまとまって、核を持たずに、安全保障、核兵器禁止条約を作っている。

世界の国の半分以上がこの地域にあり、北東アジアでもこの地帯を作りたいとモンゴルは自ら進んで核保有国に挟まれながらも、非核兵器地帯を1国で作りました。これもまた、核を持たないことで、平和を守る、軍事以外での安全保障の手段です。

そういうモンゴルだからモンゴルを攻めてはいけない、モンゴルには攻撃しないという外交を続けています。

核兵器のない世界の安全保障

核兵器のない世界における安全保障とは、どのようなものでしょうか?

考えるテーマとして、

戦争や暴力を予防することこそ最大の「安全保障」であることはいうまでもありません。しかし、何らかの理由で、そのような事態が起きてしまうかもしれません 。

そこで、

Q あなたの国が外国から攻撃を受けたとき、どのような対応をすべきだと考えますか。それはなぜですか。

  1. 非暴力で抵抗する
  2. 武器をとって抵抗する
  3. 相手国を攻撃する
  4. その他

質問の趣旨は、戦争や暴力が始まったらしょうがない、予防するための安全保障です。しかし、実際に起きたらどうするか。

傷ついた後で相手を傷つけても、取り返しがつきません。
もっと広い平和とは、戦争がないという定義です。

SDGsが達成されるのが平和だということもあり、戦争や暴力が伏せられる安全保障を今日は話したいと考えました。

SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」はあまりフォーカスが当てられていませんが、なかなかフォーカスされないこの部分を是非一度考えてもらいたいです。

質疑応答

質問:核保有国が本当に核を廃棄するのは現実的なのか?どう解体するのか?

川崎さん:例えば南アフリカは、核を6つ持っていた。それを表明し、解体し、国際機関に検証してもらって、非核化しました。核爆発を起こす核物質を兵器から取り出せば、それはもう核兵器でなくなります。その核物質は長期間保管しなくてはいけないが、軍事的な意味で、核兵器は解体可能です。

質問:ここまで人間は攻撃的なのかと思う。この人間の心というか、暴力を川崎さんはどう考えているか。

川崎さん:被害は蓋をされてきました。広島、長崎で起きたことは占領下にいたときには情報がありませんでした。その間に核兵器の競争があった、各国が被害を知っていれば作らなかった可能性もあります。今は長距離ミサイルなど残虐行為がロボット、ドローン兵器でできてしまうため被害を目の当たりにしません。「キノコ雲の下」を見ることが大事です。

4.おわりに-わたしの感想

私は漠然と核兵器は良くないと思っていました。
でも、その気持ちに100%の自信が持てませんでした。

アメリカの小・中・高を出た私は、授業で広島・長崎の原爆投下が「正義であったか否か」といった議論をし、半数以上が「正義であった」と言う環境にいて、冷戦以降の歴史を学ぶ時は、核兵器を持つことが抑止力になるといったニュアンスで学んでいたため、今回の講義を受けたことで自分の意見に自信を持つことができました。

早速、今回の講義の内容を、社会人の親友に話しました。こうやって、核と平和について論理的な理解が少しづつ広まっていくといいなと思います。(報告:氏井)

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