教育は変革を推進する鍵!釜山デモクラシーフォーラム2019報告(その1)

こんにちは。事務局長の中村です。

2019年10月14日~16日の日程で、韓国、釜山市で開催された「2019釜山デモクラシーフォーラム」に、DEARより中村と理事の近藤牧子さん、松倉紗野香さんが参加しました。また、国際協力NGOセンター(JANIC)から、事務局長の若林秀樹さんも参加しました。

キーノート・ラウンドテーブル・ディスカッションの登壇者の皆さんと

海辺に高層ビルが立ち並ぶ釜山のまち

デモクラシーフォーラムとは:SDG16の実現が目標

釜山デモクラシーフォーラム(BuDF2019)は、以下の5団体の共催で開催されました。
そして、国内外のSDGsに関わる団体、特にSDG4.7(ESDやグローバルシティズンシップ教育(GCED)の推進)とSDG16(民主主義・公正・平和に関する目標)に関わる団体との協力で開催されました。

テーマは、「平和で公正で包摂的な社会のための変革を目指したグローバルシティズンシップ教育~SDG4.7とSDG16の役割」で、約50名の海外参加者を含め、約150名の参加がありました。


「デモクラシーフォーラム」は、KOICAなどの支援で、ADAやANDが中心となりSDG16の実現を目指して行われています。初回は、2018年1月22日~24日に釜山で「平和で公正で包摂的な社会‐SDG16(平和、公正、強い組織)」をテーマに開催されました。2019年は、ウランバートルデモクラシーフォーラム(2019年2月26日、28日)、東京デモクラシーフォーラム(2019年3月20日)が開催され、今までに3つの宣言が出ています。

今回のBuDF2019の目的の一つは、様々な経験交流などを通してSDG4.7を、SDG16などの達成のために具体化していくことでした。

さらに、最終日は、フィールドトリップとして、「釜馬民衆抗争(ぶまみんしゅこうそう)」の公式な記念式典にも参加できるプログラムとなっていました。

釜馬民衆抗争とは、1979年に釜山及び馬山地域を中心に展開された、朴正煕大統領の維新独裁政権への反対抗争です。釜山大学の学生デモが市民に広がり、馬山地域へと広がっていきました。このように、釜山は民主化運動の発祥の地であり、この日程にデモクラシーフォーラムを行う意義が分かりました。

1日目:キーノートに登壇!

10月14日(月)は、午後から海外の参加者向けの「ブリーフィング・オリエンテーション」とネットワーキングセッションが行われました。参加者は、主にアジアのネットワークNGOのメンバーで、各国の市民社会が直面する民主主義の危機感を肌で感じているのが伝わりました。

今回、SDG16とSDG4.7をつなげて考える背景としては、グローバルシティズンシップ教育(GCED)を、能力向上という狭い意味に閉じ込めるのではなく、SDG16の推進のために、位置付けたいという思いが感じられました。SDG4.7は、他のゴールと異なり、それぞれのゴールを具体的に進めていく鍵となること、問題を分野横断的に考えていく必要があることが説明されました。

海外参加者のブリーフィングセッション

世界共通のグローバルな課題、特に、気候変動/経済格差・不平等/紛争・差別などについて教育の役割を考えていくことが共有されました。

午後からは大きな会場に移り、韓国の参加者も加わってSDG4.7と16がどのように進んでいるかのブリーフィングが行われました。

特に印象に残ったのは、メジャーグループ「NGO」の代表として9月の国連ハイレベルポリティカルフォーラム(HLPF)に参加したDaniel Perell氏の報告でした。

SDG4.7は教育のことだけではなく、全ての問題に関連し、SDG4.7を通して問題を具体的に解決する方法を考える必要性や、環境的社会的問題、そしてまた、経済格差が大きくなる中で、経済重視の教育を見直すことなどが話されたということでした。教育はすべての基礎になるので、変革を推進する鍵にもなるという言葉に強く共感しました。

その後、オープニングセレモニーでは、韓国の中学生による武術や、合唱などが披露されました。

中学生による武術の披露

そして、釜山市の副市長や、KOICAの総裁の言葉があり、キーノート・ラウンドテーブル・ディスカッション「SDGsとGCED」が始まりました。

ADAのAnselmo Lee氏から、ここに登壇してほしい、と言われたのは、つい3日前。
何を話せばよいのか迷いましたが、SDGsのSD「持続可能な開発」を転換していかないといけないこと、そして日本の課題について話しました。具体的には、以下のポイントを話しました。
  • 持続可能な開発とはなにか?
  • 経済偏重から、政治や社会、環境へと重点を変えていかないと変革は起きないこと
  • 日本の課題として、ESDが社会変革につながっていないこと、日本にもSDG4から取り残されている子どもたちが多くいること、そしてジェンダーやSOGI(Sexual Orientation Gender Identity)教育の遅れを指摘
  • 今の社会の延長上には持続可能な社会はないこと
参加者からは共感を得られたと思いました。

キーノート・ラウンドテーブル・ディスカッションに登壇しました

二人目のスピーカーは、インドネシアのアジアムスリムアクションネットワーク(AMAN)の事務局長の、Ruby Kholifahさん。UNDPのN-Peace賞をはじめ様々な賞を受賞している。小柄だけどとてもエネルギッシュな方でした。

具体的には、女性のエンパワメントやリーダー養成を進めており、ムスリムとキリスト教徒の宗教間の対話や協働プログラムなどを通して、お互いを理解し合うプログラムを行っています。以前、ムスリムとキリスト教徒間の抗争があったスラウェシ島などでも、有機農業などを通して紛争後の地域社会を平和的に変える取り組みをしています。

GCEDについては、以下の話がされました。
  • 市民の社会的政治的教育とつながるもので、若者が現代社会の課題に向き合うために重要な教育であること、
  • 特に、批判的思考、平和と非暴力を基礎とした価値観を促進することで、世界を変革することができるのではないか。
  • そしてそこに宗教は重要な役割を果たすのではないか
  • とても難しい状況に対話や教育プログラムを通して取り組んでいて、人や地域が変わっている事例は素晴らしかったです。
最後のスピーカーは、ワールドビジョン韓国のSang-eun Namさん。
ワールドビジョンのアドボカシーとグローバルシティズンシップ教育について説明した後、課題として、以下のことを挙げていました。
  • 都市部と地方の機会の格差があること
  • GCEDを生涯学習の過程として捉えること
  • 学校や地域の課題(いじめ、ジェンダーバイアス、差別など)
  • 教育を韓国の文脈でとらえ直すこと
これらは、日本の状況とも共通すると思いました。

会場からの質疑応答の後、司会者から三人に、「変革(Transformation)」とは何か、という問いが出されました。Sangさんは、「ネットワーキング」と答え、Rubyさんは、「批判的思考」と答えました。私は、「問を作ること、考え続けること」を挙げました。

なぜ、現在の社会は持続可能ではないのか、教育はどうやったら変えられるのか、などの問いを作り、考え続けることこそが教育の役割だと考えているからです。

キーノート・ラウンドテーブル・ディスカッションの様子

登壇させてもらったおかげで、翌日の分科会の告知もでき、DEARの名前も多くの人に覚えてもらい、その後も、レセプションで、参加者といろいろ話せて、貴重な機会でした。
(報告:中村)


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