「わたしとみんなの自由のために~憲法のお話し~」フリースペースえん・ワークショップ(2019年度・第5回) その1

こんにちは、ボランティアの西脇です。
1月24日(金)に、神奈川県川崎市にある「フリースペースえん」で、今年度で5回目のワークショップを行いました。

何かが始まるぞ、といった期待感ある表情でテーブル付近へと集まってくる子どもたち。その周りには、昼食後の団らんや片付けをしながら、時折耳を傾ける人たち。ちょっと離れた所で、パソコンゲームをしている子どもたち。ゆるやかな共存の中で、えんでの時間が進んでいきます。

今回は「自由」を切り口に、子どもたちとの対話がスタート!

「みんな自由ですか?」「何の自由が大切?」
まず、子どもたちから飛び出したのは、「自分が(他人から)決められてやらないこと」との言葉。他人から自分の行動を決められて動くのではなく、自分で決めて自分で動く、ということ。

「えん」でのワークショップでは、参加する・しないも子どもたちが自分で自由に選ぶので、彼らの行動の出発点は、まず自分で選んで自分で決めることにあるようです。日常の中で、できているようで、できていない、すごく大切なこと。

続いてあがってきた「何の自由が大切か」についての具体例を、それぞれがフセンに書き込んでいくと………。


「投票」「選挙」 なるほどねぇ~。
「やりたいことができる」「やってみたいことをやってみる」 たしかに!
「サッカー」「あそぶ」「運動ができる」「身体を動かせる」 そうだ、そうだ!
「お茶を飲める」「食べ物」 大切だよねぇ。
「住む所」「居場所」 大事 大事!
「考えられる」「何かをつくれる」 そうだよねぇ。
「友だちがいる(友だちがつくれる)」「一人一人が自分の意見を言う」 うんうん!
「学校に行くか行かないかを自分で選べる」「上がいない(上下関係がない)」
「人間関係を自分で選べる」 たしかに~!
「仕事ができる」「仕事しないで遊べる」 アハハハハ(笑)
「服が選べる」「何色が好きか選べる」 などなど。どれも納得の声です。

そして話は、「今の日本で、自由でないと感じている人のこと」へと進んでいきます。

車いすの人の絵が登場。
この絵を見て、この人が自由でないと感じていることについて考えてみました。
子どもたちが並べた、この人に関連する自由についてのフセンはというと…
「運動」「サッカー」「服」「差別」「やりたいことができる」「仕事ができる」など。そうだよねぇ。


「これって、この人のせい?本当はこの人にも自由があるのに」と聞いてみると‥
「治せないからしょうがないと思う」
「逆に新しい経験ができると思う」
「パラリンピックがあるよ~」と子どもたち。
そして、「みんなにわかってもらって、世界で話して、社会にわかってもらう(社会に訴える)」との声。お~~!!

自由でないと感じることについて、声を出し、話し合い、理解し合う。しかも、日本だけでなく世界で話し、社会へと発信するといった大人でもむずかしいプロセスを、さらりと発言する子ども。そしてそれを自然体で受け止める空気が、そこにはありました。みんな、あったかいなぁ~。

次に、話は自分たちの遊び場のことへと続きます。

「もし、全天候(「えん」の子どもたちが遊んでいる、「川崎市子ども夢パーク」内の運動場の名)で、ボール遊びが禁止になったらどうする?」という問いかけをしたところ、「ムリムリ」「居場所がなくなる~」 そりゃ、そうだよねぇ。

そして次は、もし公共の公園でボール遊びが禁止になったらどうするかについて、話が発展していきます。ボール遊びがしたい子たちの自由、ボールが当たってしまっては危ない小さい子たちの自由、両方守るためにはどうしたらいいか。う~ん‥これは簡単な問題ではありません。


「自由」は、みんなが生まれながらにして持っているものであり、みんなが必ず持っている「権利」でもあります。そして、どんなことが「自由」と言えるかは、人によって違います。そこで「自由」を考えるにあたって、DEARが用紙をした「権利カード」をみんなで見てみることにしました。

参考:「檻の中のライオン―憲法がわかる46のおはなし」

「自分にとって、大切な権利だと思うカードはどれかな?」「ひとつ選んで、その理由を教えて!」

子どもたちによって選ばれたカードは・・・

「一人ひとりちがってもいい」 
「みんな人間らしく生きる権利がある」
「自分のことは自分で決める」
「どこでどんな学習をしても自由」
「わたしたちは平等です。えこひいきや差別をされません」
「健康で文化的な生活」
「誰と結婚しても自由」
「どこに住んでも、どんな仕事をしても自由」
「情報を知るって、大切」
「勝手に悪い人だと決めつけて、捕まえたりしないこと」
「心の中は自由」など。カードが選ばれた理由もそれぞれで、もっともな意見でした。


実はね、「これ全部、憲法で守られてることなんです」と言うと、ある子どもからは「守られてないことが多いねぇ」「憲法に書いてあるのに!」との反応。たしかに、そうだよね。

そこで実際の問題として考えていくために、工事をきっかけに公園でボール遊びができなくなってしまった板橋区の子どもたちが、自分のやりたいことのために社会に訴えかけていったその方法や様子についてまとめられた、動画を見てみることにしました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191218/k10012218981000.html

2月のこと。「ボールの使用やバトミントンはできなくなりました。工事であぶないから、ごめんね」との貼り紙。「僕たちは、遊び場を失った」。そこで、少年たちは仲間と市役所に行ってみることにします。区長への手紙(投書箱)コーナーを発見!「ぼくらはとても悩んでおります。新しい公園をつくってほしい」「サッカーをしたい」。

1か月後、区長からの返信。「ボールで遊べる公園はあります」 

少年たちがその公園に行ってみると、「フェンスにボールをぶつけないでください!」との大きな貼り紙。「これじゃ、全然遊べないよ」「思いっきりサッカーがしたい」「ほかに場所はないの?」

そこで少年たちは、自分たちで公園のことを調べてみることにしました。しかし結果は、「ボール禁止」「平日閉鎖」「4時まで」とわかります。これじゃ「全然使えない」。

すると、ボランティアセンターの職員さんが相談にのってくれました。
「区議会へ陳情してみたら?」
「え!?ちんじょう?」

11月。みんなで書き上げた陳情書の完成。
公園を使える「時間延ばして」、校庭は「平日使わせて」などを書いた、異例の小学生からの陳情書が板橋区議会で話し合われ、12月4日、無事に採択されました。「やったーー!!」「僕らの要求が認められた!!」少年たちの歓喜の声が響き渡ります。

動画は、「行動しなきゃ、現状は変わらないままなんで」「僕たちができてよかったです」と話す、陳情したうちのひとりの少年からの言葉で締めくくられます。

動画を見終わった後、DEARスタッフから「放っておくと、そのままになってしまう」ので、「おかしいと思ったことを、声に出す」ことが大切。「そのためにも、憲法のことを学んでみよう」と提案しました。

ワークショップの後半では、ゲスト・久保井奈美さんによる憲法のお話を聞いて、子どもたちが一人ひとり大切にしたい権利を書き記しました。詳しくはその2をご覧ください。
(報告:ボランティア・西脇さやか)

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