ユネスコ地球市民性教育(GCED)フォーラム(2)

フォーラム2日目。テーマは、「平和をつくりだすための地球市民性教育」。

最初のスピーカーは、ユネスコチェアで、UCLAパウロ・フレイレ研究所の事務局長である、Carlos Alberto Torres氏。平和を阻害する要因として、不公正、貧困、新自由主義的グローバリズム、銀行型教育、文化の略奪と地球の破壊などを挙げた。

平和をつくる地球市民性教育で重要なのは、グローバルなシステムにアプローチすること、社会的政治的状況に対応していくこと、自分の知らない人と連帯することなどを、挙げた。地球市民性教育は、静かな革命であること。言葉に力があり、引き込まれるスピーチだった。

2人目は、平和教育に関する国際研究所(IIPE)のTony Jenkins氏。平和教育を個人の変容と社会や文化の変容に分けて整理し、参加者に「この3日間であなた自身の変化を意識していますか?」という問いを投げた。Jenkins氏には、アメリカでお世話になったので、久しぶりの再会がうれしかった。
IIPEのジェンキンス氏と
その後、2人のスピーカーの後、司会が壇上に招待したのは、トルコ大学の教授だった。先日のパリでの銃撃事件について、この重荷をフランスだけで抱えてはならない、今、トルコは、シリアから160万人の難民を受け入れている。この問題はトルコだけでは抱えられない問題だし、問題の背景も含めて世界が考えるべきことである。そして地球市民性教育はこのような問題を考え、解決する力をつけないといけないことを切実に話された。

実際に今、中東やアフリカで起きているイスラム国などの問題に触れないで、平和について語るのは違和感があった。分科会では、多様性や人権の尊重、宗教や文化を超えた対話などをテーマにしたものがあったが、全体会ではあまり触れられなかった。

全体会の後、フランスの地球市民性教育(開発教育)プラットフォーム、Educasolが主催するセミナーに登壇するため、地下鉄で会場に向かった。Educasolは、約20の国際連帯や開発教育に関連する団体が集まったプラットフォームで、2年前から「開発と国際連帯のための教育」の概念や言葉について議論を進めていたようだ。そして、2014年の総会で、正式に「開発」という言葉を使うのをやめ、「市民性と国際連帯のための教育」と呼ぶことにしたという。

セミナーのタイトルは、「地球市民性教育:世界の挑戦」。参加者は開発教育や地球市民性教育に関わる市民組織や、NGO、地域のボランティア団体、外務省、教育省、農林水産省、自治体、などに関わる約100名。登壇者は、私の他に、セネガルの教育NGOの、シェイク(Cheikh Mbow氏)と、ブラジルのNGOのマヅダ(Madza Enir氏)そして、司会はDEEEPのアナ(Ana Terresa氏)だ。
地下鉄で 左から、アナ、シェイク、マヅダ
私のプレゼンでは、あえて、DEARが「開発」という言葉を使い、「開発」についてさまざまな方面から考え、事業に反映してきたこと、ESDの成果と課題、日本で地球市民性教育を実施する場合の注意点、ポスト2015の取り組みなどを話した。

セミナー「地球市民性教育:世界の挑戦」の様子
セネガルのシェイクは、メディアを含め、多様なステイクホルダーを巻き込み、子どもたちに必要な教育を届ける活動を、ブラジルのマヅダは、若者が主体的に動く場を支援する活動を紹介した。

参加者は興味を持って聞いてくれた。フランスの若者からの質問は、郊外にいる社会から疎外されている若者たちにアプローチしていく方法を知りたい、というもので、ブラジルのマヅダは、根気強く働きかけ、銃で殺す以外の方法があることを、少しずつ伝えていくしかない、と経験を通して語り説得力があった。

セミナー「地球市民性教育:世界の挑戦」の様子
最後に、「フクシマはどうなっていますか?」という質問を受け、今の状況をかいつまんで話した。フランスの原子力推進について、フクシマから学んでほしいことも伝えた。フォーラムの後も、多くの参加者が興味を持って質問に来てくれた。「開発」についてその言葉や意味を深く検討してきた人たちだったので、「さまざまな開発があること、誰にとっての開発か」などの議論は重要で、共感できる、と後でコメントしてくれた。

ユネスコのフォーラムでは会えなかった、フランスにいる草の根の実践者に会えたのはうれしかった。年に2回フランス全土から集まって、セミナーやワークショップをするらしい。DEARの全研みたい。フランス語ができたら、ワークショップも覗きたかったが、ランチを食べて、ユネスコに戻った。

最後の分科会には間に合い、2015年以降の教育目標の枠組み作りの分科会に参加した。ユネスコが作った「行動計画のための指針と戦略」のドラフトにコメントを出し合った。

私は政策のグループにいたが、政策の話なので、教育だけでは足りなくて、様々なレベルの政策に影響を与えていかなければならないこと、知識や技術については、地域や文化の多様性に配慮すること、などの意見が出され、私は、GAP(グローバルアクションプログラム)で書かれているような、教育の再方向付けを目指し、変容を促すものであるべきことを、主張した。

先ほどの実践者との話し合いとは次元が異なり、抽象度が高まる。しかし、実際に各国、各地域の行動計画に落としていくには、地球市民性教育(GCED)とESDに関する教育のターゲットと指標が、「自分たちのもの」にしてもらいやすいこと、その上で政策も含めた教育の再方向付けがすすめられるような、革新的なものにしていく必要を感じた。

明日が、最終日、ポスト2015の行動の枠組み案、どんなものがでてくるのか、報告します。
(報告:中村)

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