こんにちは。DEARスタッフの岩岡です。
「EDUTRIP in 韓国」では、学校教育以外のさまざまな教育活動をすすめる団体にも訪問しました。
▼教育連帯体 CIATE(シアット)
ツアー2日目に訪れた、「教育連帯体 CIATE(シアット)」は、教育を通じて市民社会が連帯するためのネットワーク組織です。
CIATEは「Civil Alliance for Social Transformation through Education」の略で、また韓国語で「種(たね)」を意味する「シアッ」から名付けられています。教育を通じてだれも排除されない社会、より平等で正しい社会への変化をつくろうとする市民・団体がつながり、韓国の市民社会の教育に関する様々な声を集め、世界(グローバル)と地域(ローカル)をつなぐ市民教育をつくる活動をしています。
韓国ではグローバルシティズンシップ教育がトレンドになっており、その実践が学校教育を中心に広がりを見せています。
一方で、従来からの問題である学校内での暴力や受験による子どもへのストレス、自殺問題をはじめ、移住労働者の子どもへの教育や障害者をもつ子どもへの特別支援が不十分であること、不登校児童への対応などにも課題があることを指摘し、「個人の要因によって排除されない教育」に向けた取り組みが滞っているとのことでした。
また、日韓共通の残念なところとして、「教育の枠組みを国家がトップダウンでつくっていること」を挙げ、教師が本来の職分を全うしたくてもできない「行政担当員」になってしまっている、と指摘していました。
CIATEの目指すところは、「国連を含めた超国家的なネットワークをつくり、各国が民主的な教育を実践できているかどうかを、市民社会がモニタリングできるようになること」だそうです。
一つの例として、韓国では、「K-SDGs(韓国版SDGs)」の策定が進められているのですが、そのプロセスに市民の声は届きにくく、政府主導で決められているそうです(日本でもよく聞くような…話です)。
市民が連帯して声を上げることや、権力を持つ人を監視することの重要性を改めて認識しました。
▼ソウルイノベーションパーク&PEACE MOMO
ツアー3日目に訪れたのは、ソウルイノベーションパーク。
ソウル市の社会問題を解決し、新たな未来を設計するために、2015年よりソウル市が社会革新プラットフォームとして創り上げてきたスペースです(ソウル市がお金を出して運営しているというのがすごい)。
大学のキャンパスぐらいある広い敷地に数百の市民団体が入っており、市民が自由に利用できるコワーキングスペースやカフェ、お店もありました。
ここでは、「PEACE MOMO」の参加・体験型の平和教育ワークショップを体験しました。
PEACE MOMOはみんながみんなから学ぶ水平な「学びあい」の経験と実践を通じて、より平和で構造的暴力のない社会をつくることを目指し実行するNPOです。教師や公共団体・市民のための平和教育ワークショップ、平和教育ファシリテーター養成講座、フォーラムやセミナー、平和研究などの活動を行っています。
ワークショップはみんなで円になって座るところから始まり、さまざまなアクティビティを通して、徐々に体を動かしていきます。
アクティビティ自体はとてもシンプルなのですが、その体感を日本の教育問題とつなげて考えてみると、一人ひとりの気づきはさまざまでした。
一方的に教えるのではなく、「教えない学び」がもたらす学びの深さやおもしろさ。また、お互いをどれだけ理解しているかという信頼関係が、学び合いの質を高めること。そのためには「自分は何者か」を知ることも大切だと感じました。
また、参加者の状態を常に観察し、「お互いが学び合えているか?」を最優先に考えて場の空気をつくっていくアヨンさんのファシリテーションは、とても心地よく、参加者みんなが大切にされているというメッセージを感じるものでした。
ワークショップのあとは、PEACE MOMOが運営している「Café Trans」で交流会!
このカフェはなんと、PEACE MOMOのスタッフが仕事をしながら経営しているそうです。
今回、さまざまな訪問先で共通して考えさせられたのは「権力と市民の関係性」です。
韓国は、国の成り立ちや歴史からも明らかですが、市民が連帯して声を上げることによって、国や社会を変えてきました。最近だと2016年、当時の朴槿恵大統領の存続をめぐって、市民が大規模なデモを繰り広げ、政権交代をさせました(通称:ろうそくデモ)。
日本では、社会問題を個人の問題と捉えられがちで、社会の問題(政治や制度など)と認識されにくく、市民活動や運動にはつながりにくい。
一方韓国では、市民が声を上げることは「権利」として認識されており、「闘う」という言葉も(日本と比べると)堅苦しくなく使われる傾向があります。政治や社会問題に対する市民の意識の高さ、社会を変えていこうとするパワーの強さを韓国で随所に感じました。
権力に敏感になること、声を上げること、連帯すること、取り残されている側(弱者)から歴史や物事を見ること、お互い学び合うこと。民主的な教育や市民社会をつくるためのヒントを胸に刻み、今後の活動に活かしていきたいと思います。
<番外編>
日本大使館前の「平和の少女像」。その横には、交代でテントで座り込みをしながら少女像を守る活動をする大学生たち。なぜこの活動を始めたのか、どういう想いで活動しているのか、熱心に話す様子が強く印象に残りました。
ツアー終了後に訪れた「戦争と女性の人権博物館」。「慰安婦」が日本軍によって組織的に行われたという実相とともに、被害者が経験した歴史を追体験することができます。手前にある黄色いカードは来館者によるメッセージ。まさに、市民が声を上げて連帯していく博物館でした。
こちらもツアー後に訪れた「西大門刑務所歴史館」。残念なことに、コロナウイルスの影響で臨時休業でした。次回また訪れたいと思います!
「EDUTRIP in 韓国」では、学校教育以外のさまざまな教育活動をすすめる団体にも訪問しました。
▼教育連帯体 CIATE(シアット)
ツアー2日目に訪れた、「教育連帯体 CIATE(シアット)」は、教育を通じて市民社会が連帯するためのネットワーク組織です。
CIATEは「Civil Alliance for Social Transformation through Education」の略で、また韓国語で「種(たね)」を意味する「シアッ」から名付けられています。教育を通じてだれも排除されない社会、より平等で正しい社会への変化をつくろうとする市民・団体がつながり、韓国の市民社会の教育に関する様々な声を集め、世界(グローバル)と地域(ローカル)をつなぐ市民教育をつくる活動をしています。
運営委員のカン・イェリンさんを中心にお話を伺いました |
韓国ではグローバルシティズンシップ教育がトレンドになっており、その実践が学校教育を中心に広がりを見せています。
一方で、従来からの問題である学校内での暴力や受験による子どもへのストレス、自殺問題をはじめ、移住労働者の子どもへの教育や障害者をもつ子どもへの特別支援が不十分であること、不登校児童への対応などにも課題があることを指摘し、「個人の要因によって排除されない教育」に向けた取り組みが滞っているとのことでした。
また、日韓共通の残念なところとして、「教育の枠組みを国家がトップダウンでつくっていること」を挙げ、教師が本来の職分を全うしたくてもできない「行政担当員」になってしまっている、と指摘していました。
CIATEの目指すところは、「国連を含めた超国家的なネットワークをつくり、各国が民主的な教育を実践できているかどうかを、市民社会がモニタリングできるようになること」だそうです。
一つの例として、韓国では、「K-SDGs(韓国版SDGs)」の策定が進められているのですが、そのプロセスに市民の声は届きにくく、政府主導で決められているそうです(日本でもよく聞くような…話です)。
市民が連帯して声を上げることや、権力を持つ人を監視することの重要性を改めて認識しました。
▼ソウルイノベーションパーク&PEACE MOMO
ツアー3日目に訪れたのは、ソウルイノベーションパーク。
ソウル市の社会問題を解決し、新たな未来を設計するために、2015年よりソウル市が社会革新プラットフォームとして創り上げてきたスペースです(ソウル市がお金を出して運営しているというのがすごい)。
大学のキャンパスぐらいある広い敷地に数百の市民団体が入っており、市民が自由に利用できるコワーキングスペースやカフェ、お店もありました。
ここでは、「PEACE MOMO」の参加・体験型の平和教育ワークショップを体験しました。
PEACE MOMOはみんながみんなから学ぶ水平な「学びあい」の経験と実践を通じて、より平和で構造的暴力のない社会をつくることを目指し実行するNPOです。教師や公共団体・市民のための平和教育ワークショップ、平和教育ファシリテーター養成講座、フォーラムやセミナー、平和研究などの活動を行っています。
ファシリテーターはPEACE MOMO設立者の一人、ムン・アヨンさん(右から6人目) |
ワークショップはみんなで円になって座るところから始まり、さまざまなアクティビティを通して、徐々に体を動かしていきます。
自分の手のひらと他人の額をくっつけて、動き回ってみたり… |
二人組でタクシーとドライバーになりきって、運転してみたり… |
アクティビティ自体はとてもシンプルなのですが、その体感を日本の教育問題とつなげて考えてみると、一人ひとりの気づきはさまざまでした。
- 権力が一極集中型だと、周りが中心の権力に振り回されてしまう。まさに今の日本の教育制度ではないか。
- 今の権力構造で、孤立しているマイノリティや声を聴かれていない人はだれ?
- 権力は、必ずしも政府や○○長だけが生み出すものではない。一人ひとりが雰囲気などで意図せず生み出すこともある。
- 目を閉じている人に目を開けるようにサポートするのが教育の役割。そのためには先生と生徒の信頼関係がベースとして必要。
- 先生自身も「自分の目が閉じている」と自覚し、生徒から学ぶ姿勢をもつこと。それが信頼関係の構築につながる。
一方的に教えるのではなく、「教えない学び」がもたらす学びの深さやおもしろさ。また、お互いをどれだけ理解しているかという信頼関係が、学び合いの質を高めること。そのためには「自分は何者か」を知ることも大切だと感じました。
また、参加者の状態を常に観察し、「お互いが学び合えているか?」を最優先に考えて場の空気をつくっていくアヨンさんのファシリテーションは、とても心地よく、参加者みんなが大切にされているというメッセージを感じるものでした。
ワークショップのあとは、PEACE MOMOが運営している「Café Trans」で交流会!
このカフェはなんと、PEACE MOMOのスタッフが仕事をしながら経営しているそうです。
空間センスがすばらしい(DEARでもこんな素敵な空間を創りたい~) |
カフェの外にはカフェに入らなくても集えるスペースもあり、だれでもウェルカムなメッセージが至るところにありました。 |
今回、さまざまな訪問先で共通して考えさせられたのは「権力と市民の関係性」です。
韓国は、国の成り立ちや歴史からも明らかですが、市民が連帯して声を上げることによって、国や社会を変えてきました。最近だと2016年、当時の朴槿恵大統領の存続をめぐって、市民が大規模なデモを繰り広げ、政権交代をさせました(通称:ろうそくデモ)。
日本では、社会問題を個人の問題と捉えられがちで、社会の問題(政治や制度など)と認識されにくく、市民活動や運動にはつながりにくい。
一方韓国では、市民が声を上げることは「権利」として認識されており、「闘う」という言葉も(日本と比べると)堅苦しくなく使われる傾向があります。政治や社会問題に対する市民の意識の高さ、社会を変えていこうとするパワーの強さを韓国で随所に感じました。
権力に敏感になること、声を上げること、連帯すること、取り残されている側(弱者)から歴史や物事を見ること、お互い学び合うこと。民主的な教育や市民社会をつくるためのヒントを胸に刻み、今後の活動に活かしていきたいと思います。
(報告:岩岡由季子)
<番外編>
日本大使館前の「平和の少女像」。その横には、交代でテントで座り込みをしながら少女像を守る活動をする大学生たち。なぜこの活動を始めたのか、どういう想いで活動しているのか、熱心に話す様子が強く印象に残りました。
ツアー終了後に訪れた「戦争と女性の人権博物館」。「慰安婦」が日本軍によって組織的に行われたという実相とともに、被害者が経験した歴史を追体験することができます。手前にある黄色いカードは来館者によるメッセージ。まさに、市民が声を上げて連帯していく博物館でした。
こちらもツアー後に訪れた「西大門刑務所歴史館」。残念なことに、コロナウイルスの影響で臨時休業でした。次回また訪れたいと思います!
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