開発教育ファシリテーション講座2020 第4回「自分とみんなの参加―開発問題では避けられない!」

こんにちは。ファシリテーション研究会のメンバーの伊藤です。

10月5日(日)に、「開発教育ファシリテーション講座2020」第4回を開催しました。前回から、一週間のお休みをはさみ、二週間ぶりに皆が顔を合わせました。

ちょっとお久しぶり、ということで、まずは「how are you?」からスタート。

この二週間であったちょっと残念だったことや、嬉しかったことを3人のグループでシェアしました。個人的には、毛虫と思ったら足が百本ありそうなムカデ🐛が寝室に侵入していたことが悲しく、眠れない夜を過ごした、伊藤です。

ワークショップをする時に「参加のルール」を確認することがありますが…

今回は、これまでの第1回~3回をダイジェストで確認したうえで、「自分・人の参加をみるチカラ」として、合意形成について考えていきました。

これまでの講座
第1回「私とファシリテーション」
第2回「開発教育のファシリテーション」
第3回「傾聴とファシリテーション:感情・ニーズ・価値観を聴く」


お願いしたい学びの提案

ワークショップをする時に、「参加のルール」を確認することがあります。

この講座でも毎回スライド一枚で簡単に確認をしてきましたが、今回は、それを「なぜそうして欲しいのか」という理由も、少々「意味ありげ」に詳しく説明されました。
また、それらは「お願いしたい学びの提案」とされました。

スライドに書かれた言葉だけを、いくつかをご紹介しますが、もっと意味を知りたくなりますね。

「立派なことなんて言わなくてOK」
言った言葉はあなただけの言葉ではありません。思ったこと・感じたことは、どんなことでも大事。また、「わからない」は学びの潤滑油。それが協力でもあります。

「言いたくないことは言わなくてOK」
そしてここで話したことは、この場所に止めましょう。「空気」や「流れ」よりもご自分を大切に。

「学ぶことを楽しみましょう」
いろいろな意味で…です。

シミュレーションで合意形成

初めての場所でハイキングに行くために、個性的な5人のツアーガイドの中から一人選ぶというもので(津村俊充『プロセスエデュケーション』金子書房、2012より)、まずは、個人で優先順位と理由を考えたのち、5人のグループになって意見交換しながら合意形成をはかりました。

そして、どの程度意見を言えたか/聴けたか、合意形成はどの程度できたか、また、グループの他のメンバーの動き、活かしたいことを含め、各自でプロセスをふりかえった後、それぞれのふりかえりを小グループでシェアしました。

各参加者のふりかえりの一部(googleformsより)

  • 話につながる過去の経験をエピソードとして話すことができた(結論だけじゃなく、なぜ自分がその順位にしたのか、の背景まで共有させてもらえた)
  • 優先順位までは決められなかったけど、グループ5人の共通点(選ぶポイント等)を話すことができたし、最後、この5人で山行きたいね~となったので、その気持ちさえ生まれたらお互いに尊重し合えたのかな~と思いました。
  • それぞれが持っている価値観(なぜ嫌だと思うのか。許せるのはなぜか?)を互いに共有しておくことは大事だと思った 
  • 少数意見にも必ず耳を傾ける。意思決定は急がない。話合いを重ねれば、違う側面に気付くことができる。最初は、自分は気づかなかったかもしれないが、話し合うことで、何を本当に求めているか気づくことができる。
  • 相手の言った意見には評価や判断はしない。自分が話すだけではなく、どうですか?とみんなで話しやすい雰囲気をつくる。相手の性格もできたら知る。互いを知ることが合意形成につながる。参加のルールを事前にやること。

「私にとって重要だと思う開発」で合意形成

次に、「何のための開発?」ランキングシート(DEAR『豊かさと開発』、2016)を使い、3人グループで、一つのコミュニティの住人として、どの開発を重要にするか順番を考えました。

その後、再び各自で、どの程度自分の気持ちや意見を伝えることができたか、受け入れることができたか、グループの動き、今後活かしたいことを含めふりかえりました。

各参加者のふりかえりの一部(googleformsより)

  • 「5人のツアーガイド」以上に、自分の考えを言語化することが難しく、思っていることをそのまま伝えることができなかった。
  • 人数が少なかったからか、ちょっとした疑問などもつぶやいたり、ふとした気持ちなども伝えることができた。
  • なかなか意見が合わなかったけど、それでもできることをやろうと互いの意見をふりかえりながらすることができた。違う意見が出たときにどうしてもちょっと違う気がする…という雰囲気になって、どう切り返していいかわからないことがあった。
  • 何を重視するかなどは話せたが、順位を明確に作成するのか、というところまで踏み込めなかった(2:1で意見が割れた時に、多数決的に決めるわけにもいかず、意見変更を促す説得をするわけにもいかず、うやむやのまま終わってしまった)
  • 話し手がどういうつもりで発言をしているのか、背景にある事柄にも注意をはらいながら、聞く。相手が話している内容と一緒に、なぜそう思うのか(その人が大切にしているところは何か)を知る。
  • 何かに誰かと取り組むとき、みんなが参加しているのか、同じ温度感を共有できているのかを確認する作業は必ず入れていかないといけないと思った。
  • 日々「傾聴」を意識したい。意識的にしていないと自分からの発信に偏ってしまいがちなので。

2つのワークのプロセスをふりかえる

最後に、「5人のツアーガイド」と「開発ランキング」の2つのワークをやってみて、グループの動き、自分に対して気づいたことをについて分析し、全体で以下のような感想が共有されました。
  • 合意形成で大切なこと。グループにいる人を信頼し合うことから始まるのではないか。この場が、安心できる場だったのか。そこに知っている人が、いる、いないで違う気がした。3回を通じて、安心して話せる場づくりが必要なのでは。
  • 特に「開発ランキング」では、考えを言葉にすることが、難しかった。1回目はカジュアルな内容で、2回目はより根本的なものだったため、発言が慎重になり、停滞したり、議論を止めてしまったところがあった。最後に考えを決めないといけないとなった時に、本当に決めることができるのか、と思った。多数決で決めないといけないのではないか、などの意見も出た。
  • 順を決めることというより、選ぶ基準の共有が大事ということになった。それぞれの基準を共有することで、合意形成につながる。前提の共有や、地域のイメージが必要であり、書かれている言葉をどう読み解くかによって変わってくる。自分の性格が見えてきた。
  • 人の意見を聞いて変わるのは良いが、それゆえ順位が決まらない。批判的な視点を持てない。意見の対立がないと進まないこともあると気づいた。
参加を捉える「自分の枠組み」を知り学びをカタチにするのを手伝う

最後に、まとめのレクチャーがありました。
概要(といいますか、ほぼキーワードの羅列ですが)をまとめさせていただきます。
  • 組織としての学習をつくるために「コミュニケーション」と「参加」を把握する。
  • 把握する「自分の枠組み」(思い込み、感情、価値観、考え方など)を知る。
  • コミュニケーションの不確かさから重要となる質問や確認。
  • 開発問題を学ぶにあたって、そして地域や社会づくりに不可欠な合意形成。
  • 合意形成プロセスのファシリテーションは「いろいろな立場があっていいよね、難しいよね」で済まされるのか?
  • 「お願いしたい学びの提案」は、組織として学習する理念の共有。

どれもなるほど、と思いつつも自分のものにするには、まだまだ時間がかかりそうです。

終わりに(感想)

ワークをしながら、現実的な話になるほど、自分の開発に対する考えを伝え、聴き、理解を確認したうえでの合意形成は簡単ではないということをつくづく感じました。ましてや、多様な背景や考えを持つ人々が共に暮らす地域や社会で、自分や人の枠組み、起こっていることを理解しながら、合意形成の場に参加してもらうということを、開発教育のファシリテーションでは重視しています。

一人ひとりの参加の質を保障し、安心して参加できる場づくりをどうやっていくのか、そのために互いの「参加のルール」をどう作っていくか、自分が今いる場所から考えたいと思いました。(報告:伊藤)

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