開発教育ファシリテーション講座2020 第5回「ファシリテーションにおける『問い』を考える」

みなさん、こんにちは。ファシリテーション研究会メンバーの松倉です。
11月1日(日)に「開発教育ファシリテーション講座」第5回を行いました。
今回のテーマは「問い」です。

講座の最初には、食欲の秋にちなんで、「1週間で食べたもののなかで、みなさんに紹介したい美味しいもの」と題して、みなさんから美味しいものを紹介していただきました。

私は「美味しいもの」として餃子🥟と芋煮🍲を紹介していただきました。その日の夜、何だか無性に餃子が食べたくなり、当日の我が家のお夕飯が餃子になりました!(芋煮は次の週末かな!?)

ワーク1 新聞を使った問いづくり

事前に読んでいただいた新聞記事(動物起源の感染症)ついて、「もっと知りたいこと」「疑問に思うこと」を問うための問いをまずは、個人で作成しました。

その後、グループ内で質問を共有し、出てきた質問を「何についての問い」なのか分類してタイトルをつけました。ここでは、講座内で初めてJamboardを使って進めました。


グループワークの後、他のグループが作成したJamboadをを見て、自分たちの作った問いと比べて、視点の違い、聞き方の違い、分類の仕方の違いや、ワークの感想を聞いてみました。

  • 自分たちのグループでは、「持続可能」という視点がなかった
  • 本当に動物由来なのか(考える余地がある)前提を覆す質問
  • コロナがなかったらブッシュミートの話は出てこなかったのか(コロナで見る視点が変わった)
  • 自分は持続可能性を考えていなかったことに気付いた

同じ新聞記事の内容から、それぞれの参加者によって着目する部分が異なることで、多様な視点が出てくることがわかり、そこから視点が広がったり、考えが深まったりすることに気づくことができました。

ワーク2 文章から質問づくり

2つ目のワークは「文章」を使った質問づくりです。

質問には2種類があることを説明し…

  • 「閉じた質問」(「はい」「いいえ」ないし、一つの単語で答えられる)
  • 「開いた質問」(5W1H:何・どこ・いつ・どこで・誰が・なぜ・どのように。いつ・どこは「閉じた」にも入ることもある)

まずは、以下の文章について質問をつくってみました。

「ファシリテーターは教育者であるか、黒子であるかのどちらかである」

この後はペアになって、それぞれが作成した質問を共有し、「閉じた質問」は「開いた質問」(例:開発教育は、簡単にできますか?→誰が、開発教育に取り組んでいますか?)へ、「開いた質問」は「閉じた質問」(例:開発教育とは何ですか?→開発教育は、学校で学べますか?)へ作り替えていきました。

・「教育者」と「黒子」以外はないですか?(閉)
→「教育者」と「黒子」以外の役割があるとしたら、それは何ですか (開)

・ファシリテーターは何をする人ですか?(開)
→ あなたはファシリテーターですか?(閉)

その後、4人グループになって、「ファシリテーションを考える上で良い質問」を3つ選んでもらい、「なぜ良いと思ったのか」その理由も考えてもらいました。グループワークの後は、選んでもらった3つの質問と、良いと思った理由を参加者みなさんで共有しました。

各参加者のふりかえりの一部(googleformsより)

▶︎質問をつくる作業で、気づいたこと、難しかったこと、面白かったこと、は何ですか?

  • 1つの質問で、広がり深まるような質問を作る。 しかしながら、上記のことは、自分にとってはそうであっても、相手にとってはそうでないこともある。 そうなると、相手のことを少しは知った上で、質問を考えないといけないなと思った。相互作用の中で質問は生まれるものではないかと思った。
  • 質問をつくる作業を2人組で行ったが、質問の文章は似ていても、話をきいてみると、自分とは少し内容が違うということもあるので、表面上の文章だけではなく、相手の意図も理解して考えていく必要があると思った。
  • 閉じた質問と開いた質問を書き直すこと。一体何を問いたいのか、何のために聞きたいのか、また質問に使われている言葉の定義などについて深く考えさせられた。

レクチャー 問いとファシリテーション

問いづくり・質問づくりのワークのあとに、「問いとファシリテーション」についてレクチャーをしました。レクチャーの中では、最初に質問づくりの最後に選んだ「良い質問」の「良い」って何?というところから始まりました。


「質問すること」「問いかけること」は、内容の答えを導き出す目的ではなく、自らの考え方を確かめ、深めてもらうことが目的であって、自分が「当たり前」とする枠組みを考え直してもらうこと、前提の枠組みを揺さぶることです。

今まで学習者が当たり前として考えてこなかった前提に疑問を投げかけ、「今までそのことに気づかなかったのは何故なのか」と省察する機会をつくることで「揺さぶる」ファシリテーションに繋がります。

「参加型やっている風」のファシリテーション(意見を聞いているようで、相手に望ましい答えを考えさせる。参加型でやっているようでレールに乗せている)にならないためには、「質問」「問いかけ」をする言葉を大事にし、その意図を自身で省みて問う目的をまた問うてみては?とこれからのファシリテーションにつながるお話がありました。

各参加者のふりかえりの一部(googleformsより):

▶︎ 2つのワーク体験、レクチャーをとおして、これまでの自分がしてきた「問い」は、どのような「問い」だったのか?

  • 「よい問い」とは、質問の意味が明瞭で参加者が答えやすいものと思っていた。まさに、「参加型やってる風」で、参加者をこちらの意図する方向へ誘導していたかもしれない。
  • こちらがあらかじめ想定していた「答え」に誘導するための問いが多かった。また,こちらから問いかけるばかりで,児童生徒やワークショップの参加者自身が問いを生み出す機会を設けていなかった。大切なのは「答え」を導くのでなく「本音」を引き出すことなのではないかと考えた
  • 生徒に考えせる問いにはこだわってきましたが、「自分の価値観を揺さぶる問い」「見落としていた点に気づかせる」問いについては意識が足りなかった。今後大事にしたい。
  • 自分が答えられるかを考えて問いをつくるために、答えにくいものはさけるか、答えられるように例をあげたり工夫するなどしていたので、自分の枠の中で問いを作っていたように思う。自分が答えられないとだめだと決めつけていたようにも思う。

各参加者のふりかえりの一部(googleformsより):

▶︎ これから「問いかけ」の際に気を付けようと思ったことはどのようなことですか?

  • 価値観をゆさぶる問いかけ、自分を見つめ直す問いかけをしていきたい。また、授業の中で児童生徒自身が問いをもち、考えを深めていくような授業を実践したい。
  • 「よい問いかけとは何か」を問いかけられて、気持ちが揺さぶられた。参加者の気持ちを揺さぶるインパクトのある言葉を投げかけられたらと思います。
  • なぜ、その問をするのか。参加「風」ワークショップになっていないか
  • 確かめる質問と揺さぶる質問を意識する、何をききたいと思って問いを立てているか、問いの目的を問う。

おわりに(感想)

レクチャーの中にあった「参加型やっている風」ファシリテーションについては、参加者からたくさんの感想がありました。

ひょっとしたら、私も含めて、みなさんの中に「レールに乗せてしまっているのではないか」「自分の意図した方向に進めているのではないか」と思い当たることがあるのかもしれません。そんな「自分」を「なぜなのか?」と省みる機会を設けたいと思います。

8日(日)は講座の最終回を迎えます。最終回のテーマは「ふりかえり」です。
みなさんからのお話を楽しみにしています!(報告:松倉)

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