機関誌オンラインcafé「今だから話したい、平和のこと―ウクライナ情勢を受けて」レポート

こんにちは。DEARボランティアの上條です。

5月13日(金)19:30~21:00、機関誌オンラインcafé「今だから話したい、平和のこと―ウクライナ情勢を受けて」を開発教育とSDGs研究会・機関誌編集委員会合同企画として開催しました。

20名の方が参加して下さり、あっという間の90分。終わったあとも20分延長して15名ほどの方が残り、話し続けました。


今回は、ウクライナ侵攻をめぐる情勢のさなかにいる今、DEARとしても個人としても直接的に何かアクションを起こすことは難しいけれど、改めて平和と開発教育に考える場を持とうということで、機関誌「『開発教育』第62号 特集「『平和』に向き合う開発教育」(2015年発行)を片手に集まりました。

プログラムの流れ

  1. 全員ひとこと自己紹介
  2. ワーク「わたしの気持ち」ウクライナ情勢を受けての私の気持ちは…
  3. 機関誌62号を読んで~グループに分かれて意見交換
  4. 全体共有

ワーク「わたしの気持ち」

「悲しい」「励まされる」「おどろいた」など、15の「気持ち」の中から「わたしの気持ち」に近いものを選び、その理由も考えるワークです。個人でワークシートを書いたあと、グループに分かれて感想を共有しつつ、ウクライナをめぐる情勢等について思いや意見を共有しました。

<感想より>

  • くやしい、もやもや、受け止めきれない、訳がわからないなど。
  • ベトナム戦争と重なる。なぜ「避難民」なのか、なぜウクライナだけ特別なのかなどの意見が出た。
  • 何をニュースソースにしているかを情報交換できた。フェイクニュースや偏った報道などもありながら、あまりに背景や歴史が多く全体像をつかみきれない。

執筆者からコメント

岩﨑裕保さん
理論編「核と原発と開発教育―非核化に向けて」を執筆

  • 「核」はウソやだましやごまかしや隠し事に満ち溢れている
  • そもそも「マンハッタン計画」は中央集権的計画経済であるニューディール政策の延長で、秘密裡に行われ、関わった科学者個々人も計画の全体像はまったく見えていなかった。その後、Atoms for Peace(核の平和利用)と言われるようになってからも、国家主導の巨大科学技術プロジェクトであることに変わりはなく、とにかく民主的でなくお金がかかる――宇宙開発にも同じことが言える。
  • 広島・長崎で軍事の、福島で民生の核の被害者となった日本社会は、「核」について大いに発言できるはずなのに、米国と共にあることで真っ当な姿勢を示せていない。モーリシャス、グアム、ハワイ、沖縄に植民地的に基地を持つ米国といまQUADを推し進めている日本は、かつて軍事的に領土を拡げようとした結果によって、新たな憲法で世界平和を訴え誓うことになった。この体験をもって平和のために尽くす日本を見たい

辻本昭彦さん
実践編「ISS・過激派組織による人質事件の授業―少し難しいことに挑戦する」を執筆

  • 機関誌62号に書いた実践「ISS・過激派組織による人質事件の授業」は、今でもよく覚えている。どこを落としどころにしたらよいかDEARにも相談したりしながら考えて、当時、外務省がジャーナリストにパスポートの返納を命じたという事実から、「渡航の自由か邦人保護か」というジレンマを議論の軸にした。生徒は関心を持ち、よく議論をした。
  • ウクライナのことをどう授業で扱うかを考えているが、ISSの事例のような対立軸が明確でなく、とても複雑なのでどうしたらいいか悩んでいる

斎藤聖さん
インタビュー「『東京の路上で』平和に向き合うために―加藤直樹氏に聞く」を執筆 

  • 機関誌の加藤直彦さんへのインタビューなどを通して、まず、国家という枠組みがいかにファンタジーであり、また国家が作り出すファンタジーの中で、個人の考えは全く異なり議論はかみ合わないということを感じている。帝国主義が悪者だ、というのもファンタジーで、ロシアに負けない、ということが正義になってしまっているという話。
  • 来年関東大震災100年を迎えるが、震災での虐殺など、共通点がある。

グループディスカッション

グループに分かれて機関誌を読んでの感想や意見交換を行いました。

<全体共有>

  • 従来の平和教育のように被害者視点や心に訴えかけるようなものや、加害者視点のものではなく、俯瞰的に見たり、構造的に捉えていくことが大切ではないか。
  • 戦争を憎んで人を憎まず、正義の戦争はない、ということが世界共通の価値観になって欲しいと思う。
  • 構造的に捉えるということは、授業のヒントになった。平和教育というのは、時間がかかる。20時間かかる。今、理系の学生に教えているが、何のために科学があるのか、という社会的な視点が大切だと改めて思った。
  • 平和学の一般理論、そして各論を教えた。トランセンド法の実践。
  • SDGsは「核」の問題が弱い。SDG4.7でESDの枠組みが提示されているが、4.7自体が平和教育の枠組みである。開発課題が平和にどう関わるかを考えるべき。
  • ウクライナのニュースの陰で、今もこれまでもアフリカの紛争問題が取り上げられてこなかったという黒人差別の問題を感じる。
  • 国際犯罪は世界中でずっと行われている。国家の暴力性。戦争がどうやって始まり、どうやって終わるのか、ということが重要だと思う。
  • 若者は自分たちがウクライナになったらどうしよう、と考えるが、日本がロシアになったらどうしようと考えるべきではないか。(リチャード・フォーク:ウクライナ戦争の人民法廷の提案の紹介)

アンケートより

  • このような世界の状況でありながら、平和についてじっくりと話し合う場や機会は少なくってきているのではないかと改めて感じ、このような場を設定してもらえたことをありがたく思います。
  • 自分とは異なる感じ方を、どう受け止めるか、難しいところですね。戦争と平和の話になると、世間のみなさん、それぞれ自分が正義だと考えているわけですから。
  • ウクライナ侵攻や平和教育に関して、自分自身の考えがまとまっていない、頭が混乱していることを改めて感じました。言葉にすることがうまくできませんでした。
  • 感情的ではなく構造的にウクライナ侵攻を考えることの大切さをあらたにしました。
  • 日本の現状を心配している方が多かったが、同感です。日々の平和への活動が大切だと再確認しました。
(報告:上條)

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