第2期DEARカレッジ・SDGs学習のつくりかた(テーマ編)第3回「気候変動」

こんにちは!
DEARでボランティアを始めて約1年になる森田です。

初めてブログを担当させていただくので、わかりにくい部分もあるかもしれませんが、頑張って書いたのでぜひ最後まで読んでいただけると幸いです…!

平田仁子さん(Climate Integrate)を迎えたDEARカレッジ第3回のテーマは「気候変動」
今年もすでに猛暑日が続いていますよね。
夏になると、特に気候変動のことを考えます…。

皆さんは気候変動への対策として何が思い浮かびますか?
私はマイバッグの使用や、電気をこまめに消すなどそういったものが最初に浮かびました。

しかし、本当にそれは有効なのか、他にできることはあるのではないか。一度や二度考えたことがある人もいるのではないでしょうか?

そういった部分を含め、平田さんがドイツのキールより、気候変動の現状についてお話してくれました。

プログラム

  1. グループディスカッション①
  2. レクチャー(気候変動の現状・国際動向・日本の課題)
  3. グループディスカッション②
  4. おわりに-わたしの感想

グループディスカッション①

ひとつ目のディスカッションの問いは、「気候変動対策が進むと私たちの生活はどうなると思いますか?」

選択肢は以下の3つです。
①良くなる
②大変になる
③変わらない

「良くなる」と答えた人の意見として、「生活の面では不自由な面があると思うが、我々の生活が将来的によくなる」や「最初は不便で大変かも知れないが、だんだん慣れてくるのではないか」という意見がありました。

「大変になる」と答えた人の意見としては、「地球には良いかもしれないが、生活が大変になる」「最初は大変。対策などの計画を立てても頓挫しそう」などの意見がありました。

そして、「変わらない」と答えた人の意見としては「気候変動対策は放っておくと悪くなる、頑張って現状維持のイメージがあるので、頑張って対策すれば、ギリギリ生活は変わらないのではないか」という意見がありました。

いずれの回答にしても、気候変動への対策によって「私たちの生活が大変になる」とイメージしている人が多いようでした。

では、なぜ私たちはそのようにイメージしてしまうのでしょうか?
平田さんが答えてくださいました。

平田さんのレクチャー

ひとつ目のディスカッションで出た意見を聞いたうえで、平田さんがおっしゃっていたのは…
「世界と比べると、日本は気候変動対策によって生活の質が悪くなると思っている人が多い。政府が温暖化政策を国民負担だ、経済に悪影響だ、などというような捉え方をし、我慢しなければいけないという言われ方がされてきた。良い面が語られてこないから私たちも良い面がわからない。気候変動によって私たちはどうなるのか見えないというのが、この点が難しさでもあり、問題の全容が伝わっていないところ」
ということでした。

確かに私も、メディアから受け取る一面的なイメージでしか、気候変動について捉えていなかった気がします。

次に平田さんのお話を、「気候変動の現状」、「国際動向」、「日本の課題」の3つにわけてまとめていきたいと思います。

気候変動の現状

世界の二酸化炭素の排出量は年々増えています。
新興国の排出量増加はもちろん、世界的に環境問題をわかっていながらも、目を背けたりして状況を悪化させてしまっているのが現状です。

国連のIPCCが出した第6次評価報告書では、温暖化の原因は人間活動が原因だと言いきられています。つまり気候変動は「人災」ということになります。

平田さんによると、残念ながら温暖化はこれからももっと進んでいくということです。そして気温上昇レベルが高いほど、今すでに起こっている異常気象の被害(高温、大雨、干ばつ等)も大きくなっていきます。

そんな環境問題の大きな危険性から、今では1.5℃の気温上昇に留めようというのが世界的な目標です。

では、この数字はどれほど現実的なのでしょうか?

Climate Action Trackerによると、今、世界の国々が気温上昇に対しやると宣言している対策を全て行ったとしても、約3℃の気温上昇に行きついてしまうそうです。

日本では「2050年カーボンニュートラル」と言われていますが、2050年までと悠長なことは言っていられないというのが現実のようです。今すぐに気候変動への具体的な対策を行わなければいけません。

また、IPCCは、石炭は2030年までに世界中で8割、石油やガスは約半分に減らさなければ、気温上昇を1.5℃に留めることはできないということを示しています。
 
具体的な数字を見て、ひやりとした方もいるのではないでしょうか?
このような危機的状況に国際社会はどのように動いているのでしょう。

国際動向

厳しい気候変動の現状の中で世界はどのように動いているのか。記憶に新しいCOP26では次の目標が掲げられました。
  • 1.5℃の気温上昇への抑制を目指す
  • 2022年までに2030年目標を見直し、強化
  • クリーンな電力の普及を加速、石炭火力削減・化石燃料補助金廃止
  • 途上国の適応支援の資金は2025年に倍増
意欲はあるが、実現できるかについて難しさがあるというのが世界の現状です。

しかし、悲観ばかりする必要はありません。

現在では、中国やインドネシア、インドのような新興国を含めて、排出ゼロを目指そうと言うようになりました。ゼロを目指すということが世界の共通目標になったことは、大きな転換期ともいえます。

また、民間の金融セクターも動き始めています。これまでは環境に悪い事業に投資・融資してきた金融セクターが、これからはそれらの向け方を変えようとしています。
脱炭素のために、いくら、どこにお金を使うかを示すロードマップも作成されています。

深刻な気候変動に対し、世界は明らかに変わろうとしています。



日本の課題

さて、このような非常事態下で日本はどのくらい気候変動に取り組んでいるのでしょうか?

講義の中で紹介された、気候政策にどれぐらい取り組んでいるかを表わしたGerman Watchのランキングによると、日本は主要国65カ国中45位という位置にいます。

さらに、石炭火力使用の状況をどのように改善し、対策をとっているかのランキングにいたっては、先進43カ国中、日本はなんと最下位です。

脱炭素が叫ばれるこの時代に、石炭火力発電所の設置がいまだに進み、化石燃料からの脱却はなかなか進んでいませんが、再生エネルギーの普及もあって、毎年少しずつ温室効果ガスの排出量は減ってきています。つまり、排出ゼロは決して不可能とは言いきれないということです。 

しかし、こまめな省エネだけではなく、日本社会のインフラ作りやエネルギー供給のあり方を変革しなければ、ゼロにすることはできません

平田さんは、日本において次のような壁を感じています。
  • 基本的知識と理解がない(ゆえに緊急性が伝わっていない)
  • 問題の構造的理解ができていない(こまめな省エネだけでは答えが出ない)
  • 人々を立ち止まらせる一面的な情報の広がり(再生エネルギーは高い、原発・石炭は必要、ウイグル自治区の人権侵害がある、など)
  • 既得権益を守る保守的政府
  • 変化を好まない国民性
  • 社会課題へ参画しようとしない(自分の力では何ともならないと思ってしまう)
  • 市民社会・NGOの力
  • 言葉の壁(英語での情報などが届かない)
これらの壁を乗り越えるために、情報リテラシーやチャレンジ意欲、行動喚起・変化の担い手の育成が必要だと平田さんはおっしゃっていました。

何もやっていない、何をやればいいかわからないという方は、まずは気候変動に関する正しい情報を収集するということをやってみてはどうでしょうか。

質疑応答

レクチャー後に次のような疑問が出ました。

「どのようなことが社会の構造を変える個人の行動になるのか」

これに対する平田さんの答えとして、省エネ以外に次のような個人の行動の一例が出ました。
  • 再生可能エネルギーのプロジェクトに出資する。
  • 政治家への問いかけをする(それによって政治家も気候変動に関心を持ち始める)。
  • より良い製品を求めるような電話を企業などにかける。
  • 情報源であり、人を繋げることができるNGOを活用する。
個人の行動の幅は広く、「社会の変革」を促す行動も個人の行動だということでした。
現在の危機的状況のなかでは、今やっている省エネのその先の行動が求められています。それがきっかけとなって産業構造の変革につながるかもしれません。

グループディスカッション②

2つ目のディスカッションのテーマは「危機感と可能性を共有するために、どんな準備が必要か?」というものです。次のような意見が出ました。
  • メディアの変革
  • 教育はテーマを扱うだけでなくて、根本的な問題をきちんと問うていく必要性
  • 人々は危機感を持っているけど、行動に移すなどにおいてはツールやスキル、態度がない。
  • 与党や野党がきちんと環境問題を議論する。
  • 環境問題を知る
平田さんのお話の中では、「コミュニケーション」という言葉がたびたび登場しました。

企業など様々な関係者と対立するのではなく、コミュニケーションを通じて、ソリューションを提案し、ともに答えを創出することが社会全体を変えていく鍵になります。

気候変動への危機感を持ちつつ、未来への希望を捨てずに、コミュニケーション含め自分たちができることの幅を広げて行動することが大事ですね。

おわりに-わたしの感想

正直、平田さんのお話を聞くまでは、これほど気候変動が深刻だと思ってはいませんでした。メディアから受け取る環境問題の内容はなんとなく雲をつかむような話で、いつか何とかしないといけないけれど、どこか自分事として捉えにくい感覚がずっとありました。

しかし、一人一人のこまめな省エネではもう追いつかないところまで地球が危機的状況に来ていることを認識できたと同時に、世界はまだ諦めていない、個人の行動にも様々な動き方があるのを知ることができ、シロクマがかわいそうという気持ちだけではなく、もっと正面から自分事として気候変動を捉えられそうです。私も一歩踏み出そうと思います!

皆さんも、正しい情報を集めてみたり、身近な人に話したりするなど、自分がやりやすいことから気候変動への対策の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?

次回のテーマは「ジェンダー」です。講師に村瀬幸浩さんをお迎えします。
(報告:森田)

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