BLDC in ハノイに参加しました(2)

レポート1ではBLDCの初日と2日目の様子を紹介しました。
こちらでは3日目以降の様子を紹介します。

★3日目:学校と手話言語の国際デー・イベントへ

研修3日目は、ハノイ周辺の教育機関や団体などを訪問しました。私はベトナムでの教育現場を見てみたいと思い、聴覚障がいのある子どもたちが通う学校「C5 Non-formal Learning Center for Deaf」を訪問先に選びました。

C5は今年設立4年目の民間学校で、現在32人の幼児~小学生が通っています。ベトナムでは、耳が聞こえない子どもが通える学校や理解のある先生が少ないため、C5に通うために家族でハノイに移住するケースもあるそうです。

驚いたのは、政府から公的な援助は無く、生徒の家族の資金や少量の寄付に頼って運営されていることでした。C5の先生が「ベトナム政府は聴覚障がい者が何もできないと思っている(だから聴覚障がい者に対する教育環境の整備が進まない)」と言っていたのが印象に残っています。

生徒や先生たちに手話を教えてもらい早速チャレンジ

学校に通う前は家族とでさえコミュニケーションがとれなかったのが、学校で手話を習得するとこれまで聞きたかった質問や疑問を聞けるようになって、生徒たちは先生にたくさんの質問をするようになるそうです。

私も覚えたての手話で生徒たちに自己紹介をしたのですが、みんなとてもアクティブで、静かだけど賑やかだったのが印象的でした。

手話のダンスを披露してくれました!

ちょうど同じ週の9月23日(金)が「手話言語の国際デー」で、「Listen by Eyes 2022」というイベントがハノイで開催されました。

C5の生徒たちを始め、様々な聴覚障がいのある子どもたちや若者が、歌やダンス、劇、クイズ大会を披露していました。手話の魅力やパワーをとても感じた夜でした。


これは、聴覚障がいのある子どもが生まれたら親はなにをする?というクイズです。

子どもの将来を案じて、耳が聞こえるように「治して」もらうため、占い師に見てもらうという選択肢も。親の戸惑いや苦悩も伝わってきました。

★4・5日目:もりだくさんの講義とワークショップ

4日目~5日目は、ジェンダー平等に向けた教育、子どもや若者のエンパワーメント、緊急時の教育、障がい者を包摂する教育、人種差別に立ち向かうためのセッションなど、講義とワークショップが盛りだくさんでした。

緊急時の教育については、アフガニスタンの参加者から報告がありました。

昨今の政治事情の影響で67%の女の子、55%の男の子が学校に通えていないこと、一時的な学習スペースを立ち上げて学校へのアクセスや教材の確保・提供を行っていること、タリバン支配下で情報操作が進む中、物理的に学校に集まることが難しくても、テクノロジー(オンライン)が役に立っていることなど。

実は、アフガニスタンの参加者と私はルームメイトになるはずだったのですが、ベトナムが外国人の入国を厳しくしていることもあって、彼女はビザが取得できず急遽オンラインでの参加となりました。

地震や台風など天災が多い日本では緊急時の教育はどうなっている?と意見を求められ、定期的な防災・避難訓練や、食料や生活用品を学校に備蓄することについて少し紹介しましたが、アフガニスタンとの緊急性の違いを感じ、日本の事例を紹介することがなんだか躊躇われました。

でも、それぞれの国や地域の文脈によって、状況も、課題も、改善策も、必要とされる実践も異なる、ということがよく分かりました。

バリアフリーな街や学校を絵で描いたセッションもありました

★画鋲と風船のワークショップで…

特に印象に残っているのが、5日目に行われたワークショップです。

数名が画鋲📌、残りの人は膨らませた風船🎈を持った状態で、「制限時間は1分です。できるだけ風船をたくさん残すことがミッションです」という講師の説明があり、スタート。

始まった途端、風船を割られまいと逃げ惑う人たちで溢れ、私も必死に風船を守ったけど段差につまずいて転んでしまい、風船も割られてしまいました。

1分の間に何が起きたか?を振り返る中で、その時感じないようにしていた恐怖が沸き起こり、気づいたら泣いてしまっていました。

画鋲をもって走り回ること自体、体を物理的に傷つける恐れがあって怖かったのですが、それに加えて逃げる場所が限られ精神的にも追い詰められたように感じ、ずっと安全ではないと感じていたんだな、と気づきました。

実は最初の説明では、「画鋲で風船を刺せ」とは一言も言われていないので、「風船を残す」というミッションをちゃんと聞いて理解していれば、画鋲を使わずに風船を一緒に守る行動も選択できたわけなんですね。だけど画鋲を持った人たちは、画鋲を持った瞬間、それで風船を刺すものだと思い込んでしまった、ということでした。

画鋲を持った人は少数派でしたが、武器や軍事力もそうであるように、その力はとても強大であることを身をもって感じました。

また権力においても同じで、権力を持った人がその力の大きさに気づくこと、その使い方を見極めることは大切だと思いました。私も、例えばマジョリティとして権力を持つ状況で、自分の持つパワーをちゃんと認識できているだろうか、と考えさせられました。

みんなで手を繋いで、パワーを持つことについて振り返った

★最後はダンス!

最後の日は、各国の伝統衣装や民族衣装に身をつつみ、歌やダンスなどを披露しあいました。私は普段着で参加したのですが、ほとんどの参加者は色とりどりの衣装を身にまとっていてとてもきれいでした!(浴衣を持っていかなかったこと、今年一番の後悔です😂)

衣装がみんなカラフル!特に注目を集めたのはソロモン諸島のBlondie(真ん中やや左、青い衣装)。会場にあった葉っぱを使ってダンスを披露していました!

ベトナムのダンスが素敵でした!(最後はみんなでインドのボリウッドダンス♪)

とにかく色んなセッションが目白押しで、毎日をじっくり振り返る余裕もなくあっという間に過ぎていった6日間。

研修を通して感じたことはたくさんあり、このブログを書いている今でも整理しきれていませんが、コミュニケーションは言語だけではなく、伝えよう・繋がろうという姿勢が大切だ、ということは強く感じました。

ファシリテーションをする上でも、言葉だけに頼っていないだろうか?ということはこれからも意識していきたいと思います。

また、各国の教育に関する状況を聞く中で、日本との状況の違いや差を感じつつも、それぞれの文脈で活動や実践を重ねていくことの大切さ。そして、活動の根底には今の社会に対する問題意識をみんな共通して抱いていることが分かり、アジアの仲間と繋がりを作れたことがとても心強く感じています。

研修当初は言語の壁をとても不安に感じていましたが、こうして15ヶ国の仲間と繋がれたことが嬉しく、私自身もエンパワーされました。

まだまだ感じることやモヤモヤもあるのですが、これからも活動を進めていく中で、「あ、あの時のあの体験は…!」という感じで思い出して振り返っていくのだろうな~と思っています。

今回の研修では、大人が学ぶプロセスや場づくりを体感で学ぶことができたので、DEARの活動や、講座の企画などでも少しずつ意識して取り組んでいきたいと思っています。
(報告:岩岡由季子)

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