こんにちは!
初回に引き続き最終回のブログを担当させていただきます、大学院生のボランティアスタッフの伊藤聖矢(いとうせいや)です!
今回は、オンラインで開催されている「第3期DEARカレッジ SDGs学習のつくりかた」の第7回の様子をお伝えします。いよいよ最終回です…!
プログラムは下記の通りです。
「第7回 SDGs学習のつくりかた」
1. 第1回-6回の振り返りおよび学習のポイント・SDGsとの関連
2. グループディスカッション1(皆さんは、なぜSDGs学習を進めるのでしょうか?)
3. レクチャー
4. グループディスカッション2(吟味・検討・議論をしてみる)
5. グループディスカッション3(SDGs学習としてやってみたいこと)
6. お知らせ等
このなかでも、グループディスカッションやレクチャーの内容をご紹介します。
(1)グループディスカッション1
「皆さんは、なぜSDGs学習を進めるのでしょうか?」というテーマでディスカッションを行いました。
参加者からは、以下のようなコメントがありました。
・SDGsは自分たちが解決したい問題と重なる。SDGsのおかげで問題を話しやすくなったが、SDGs自体を学ぶことが学習の目的となっているのでは?
・SDGsに詳しい子供を育てたいのではない。SDGsを通して学んでほしいのだ。
・SDGs学習と本来的な学びについて改めて考えた。自分の生き方や社会の変化と関連する学びであるべき。
(2)レクチャー
DEAR副代表理事/早稲田大学非常勤講師の近藤牧子さんによるレクチャーです。
①改めてSDGs学習とは
SDGs学習とは、SDGsと社会問題のつながりを学ぶだけのものなのか。なぜ国際社会はSDGsを採択したのかに立ち返ってSDGs学習を考えるべきではないか、 という問題提起がされました。
②SDGs学習を進めるにあたって変革に向かう教育とは?
今ある世界の現状を構造的に学ぶことの必要性が説明されました。なぜSDGsが制定されるような世界があるのか、人類はなぜ「今ココ」にいるのかということを、2030アジェンダから丁寧に学ぶことが重要です。この視点が抜け落ちると、単なるSDGsへのアクションを促すだけの動員学習となる危険性があります。また、 教育の役割を「知恵を伝えていく」「現状をよりよくしていく」こととし、それを通じて、「従来の価値観ではもはや生きられないということの納得」を得ることが求められます。これはむしろ大人に求められ、私たちの現行の価値認識をする必要がある。また新たな価値づくりが求められます。
③多様な意見と議論をつくる学習
「未来に向けた変革」に挑戦する教育とは何か。それは「異なる意見が学習の発展の可能性をうむものであり、予定調和、同調圧力、押し付け教育」にならないものです。そのためには、多様な意見や考えをまずは引き出す学習環境づくりが必要であり、そのうえで、その場に現れた「言葉」を使ってどのように学習を発展させるのかを考えることが重要です。「キレイゴトワークショップ」「意見を引き出している風学習」などの、上滑りではないSDGs学習のために、私たちは議論をする場を尽くしているのかという問題提起もなされました。
④構造的理解とSDGs学習
SDGs学習は、構造的理解を促進、探究するのみならず、変革に向けた学習であることが強調されました。「何をどうして、なぜ変革する必要があるのか、という問いを飛ばしてはならない。社会課題は切り取られた課題ではない。歴史(私たちの経緯)の積み上げで今に至る」ことを踏まえてSDGs学習を行うべきだということです。
⑤ポイントとなる『公正・共生の模索』
ある課題に対して、その課題の構造を学んだ上で、学習者がどう考え、互いに吟味し、より良さを導いていく。これが探究することであり、それは「正答のない課題」に取り組むこと、未来に取り組むことです。何が公正なのか?何が共生なのか?それを考えさせる「問い」を考えていくことがSDGs学習のポイントです。
(3)グループディスカッション2
第2回~6回の内容をより深く吟味・検討・議論しました。各グループの発表内容の一部をご紹介します。
①ジェンダー
・女性への差別とは?それは、 女だからとひとくくりにされて、押し付けや否定が起こったり機会が奪われたり、軽んじられること。
・男女を同じように扱うのは正しいことではない(フィジカルの違いなどから)。
・男性だから強くなくてはならないという差別もあるのではないか。
②平和
・戦争とは、相手がどれくらい軍備を持っているか疑心暗鬼になることから始まる。それを無くすには教育しかない。
・意見を食い違いがあった時にどう合意形成ができるかということをもっと平和教育として教える必要がある。
・戦争は一番の環境破壊なので、それをSDGsで扱わないのはおかしい。
③貧困・格差
・外国人労働者の方をベーシックサービスに含むべき。義務を果たしているのに権利を有していない。
・ベーシックサービスがあれば貧困は無くなるのか。格差はあったままで良いのか。格差はどうしても最後まで残るのではないか。
・労働という部分で、正規・非正規の区別などがなくならない限りは格差もなくならないのでは。
・金融資産には現状、 税がかかっていないので、消費税だけでなくここに税をかける必要があるのでは。
④多文化共生
・多文化共生は、互いを尊重し、認め合うからこそ、話し合う(違う意見を言える)関係を作ることができる状態。
・マイノリティは、孤独や疎外感を感じ、自分の文化を無視されていると感じる人。
・マイノリティ⇔マジョリティを行き交う社会。誰もがマイノリティになるからこそ、互いを思いやれる社会になるのでは。
・国籍に関わらず、日本国憲法は全ての人に保証されるべき。
⑤気候変動
・産業界はCO2を減らすために、価値観の転換が必要。
・個人レベルの取り組みにとどまらず、自治体・コミュニティレベルの取り組み、国の介入などが必要。
・経済的発展と気候変動対策は両立する?
・CO2を減らそうとすると私たちの生活はどう変わるのかという中長期的な視野が必要。
(4)グループディスカッション3
最後に、「SDGs学習としてやってみたいこと」についてシェアしてもらいました。いくつかを抜粋してお伝えします。
・最初はディスカッションが嫌だったが、だんだん楽しくなっていった。生徒にも、「慣れていけば楽しい」と伝えられるところまでいきたい。
・SDGsができた経緯は自分の所属する団体でも話してみたい。
・気候変動と関わる対策をする中で、「現状を知る」ところからこの活動を行う意義を理解してもらいたいと思った。
・足元から初めて、家族や友人に広げていきたい。
・子ども達に議論する力を付けたい。議論しないとこういった問題について深めていくこともできない。
終わりに―今後の私の展望
第1回、2回、4回、7回に参加させていただきました。残りの回も動画のアーカイブを視聴させていただきましたが、すべての回で多くのことを学ぶことができました。
私はグローバルイシュー(地球規模の問題)のなかでも特に「貧困・飢餓・格差」の問題に関心を持っています。大学院では、「国際開発・ESD・アフリカの孤児院の子ども」という3つのキーワードを設定して、研究を進めています。孤児院の子どもは最初からSDGsや個人・社会の変容を通じて、持続可能な社会を目指すESDから排除されているのではないかという問題意識を持っています(もちろん、排除されている子どもたちは他にも数え切れないほどいます)。では、孤児院というナショナル・ローカル・グローバルな問題がせめぎ合う場において、ESDやSDGs学習が果たせる役割とは何なのか、また孤児院の子どもたちが持つ「当事者性」を尊重したESDやSDGs学習とはいかなるものなのか、そのようなことをこの研究を通じて探究していきたいと考えています。このDEARカレッジで学んだことを、今後の研究の糧にしていきたいと思っています。
最後に、2023 DEARカレッジの運営に携わってくださった皆さま、および参加いただいた皆さまに感謝を申し上げます。ありがとうございました!
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