稲城市立稲城第五中学校の教員研修にて、SDGsワークショップ「世界がもし100人の村だったら」を実施しました

こんにちは!DEAR事業担当の中村健(なかけん)です。

8月25日(金)、 稲城市立稲城第五中学校の教員研修にて、SDGsワークショップ「世界がもし100人の村だったら」を実施しました。

今回はESD教育の実践事例を紹介することを目的に、教職員の皆さんに生徒の目線になってワークショップを体験してもらいながら、どのようにESD教育を進めていくことができるのかについて考えていただきました。

ESD教育に関して、学校全体の取り組みとして呼んでいただく機会はなかなかないため、その熱量と前向きさに驚きました。

稲城第五中学校ではすでにESD教育の足場掛けとして、「話し合いの時間」を行っているようで、まず生徒同士が「話す」ことを重視しているそうです。

ワークショップは対等な対話が重要なため、取り組みの事例など、私たちもさまざまなヒントをいただきました。

プログラム

1. SDGsとは?
2. 世界の言葉で「こんにちは」
3. 大陸ごとに分かれてみよう!
4. 二酸化炭素とプラスチックごみ
5. 富を多く持っているのは誰?
6. 振り返り

1. SDGsとは?

ワークショップに先立って、SDGsに関する簡単な紹介を行いました。
SDGsの大事なキーワードは、
Leave No One Behind(誰一人取り残さない)
Transformation(変革)
の2つ。

キーワードにあるように、現在の社会では取り残された人がいて、大きな変革が必要なほど、持続不可能な社会であること、そして、その持続不可能な社会を体感するために、ワークショップを行うことを説明しました。

今回は先生方が対象でしたが、「実際、ESD教育について授業で取り扱うことはあっても、ワークショップという形式はあまりイメージできていない」という声もあったため、ワークショップの進め方をただ説明するのではなく、まずは生徒と同じ目線で体験してもらうことを優先しました。

2.世界の挨拶

ここからはワークショップの中で出てくる「答え」がわからない程度に当日の様子をお伝えします。
先生全員が役割の書かれたカードを受け取ったところで、「100人村」のスタートです!
まずは世界の挨拶から。自分のカードに書かれた言葉で挨拶をしながら、同じ言語の仲間を探します。
挨拶をしながら同じ言語の仲間を探しています。
同じ言語の人が見つからなかった人からは「寂しい」という声も。

世界の国は196ヶ国、でも言語の数はなんと○○以上。
先生たちからも「えー!!」と驚きの声が上がっていました。

その後、言語消滅の危機に関する話では「重要な文化がなくなる」「孤立していってしまう危険性がある」など、いろんな意見が出ました。

3.大陸と人口

次はカードに書かれた大陸ごとに集まって、ロープの中に入ってみます。北アメリカ、南アメリカ、アフリカ…と入っていきますが、明らかに偏ったバランスが見てとれます。
どこかからは「狭い狭い!」という声もあれば、どこかからは「一人でこんなに占領して申し訳ない…」という声も。
ロープの中に入ってみるとどんなバランスになるのか、ぜひ想像してみてください。

各大陸に移動している様子。アジア圏に集中して集まっていっているのがわかります。

4.突如配られる謎の紙

次に大陸ごとに異なる枚数の紙が配られました。
アジアが最も多く、次に北アメリカやヨーロッパが多いようでした。
さらに、それぞれの大陸にいる人同士でその紙を分けてみると、1人あたりの紙の枚数は北アメリカの方がアジアよりも多そうです。
1人何枚も持っているところもあれば、1枚にも満たないところもありました。
この紙は一体なにを表しているのでしょうか?

各グループに謎の紙が配られています。なぜこんなに枚数が違うのでしょうか。

5.富と格差

最後は、最も裕福なグループから5番目に裕福な(=最も貧しい)グループまで、20人ずつ5つのグループに分かれてもらいました。

「ここにお金を表すビスケットが40個あります。そのまま分ければみんなもらえるはず(30名強の参加だったため)ですが、自分たちのグループはいくつもらえると思いますか?」という問いについて考えてもらいました。

正解は体験する際に聞いていただきたいのですが、実際にビスケットを渡すと、貧しいグループからは「なんだか悲しくなってきた」という声があがったり、裕福なグループからは「申し訳ない気持ちになる」というさまざまな声があがりました。

ぜひビスケットの数も考えてもらいたいですが、なぜこんなに格差ができてしまうのか、どうすればその状況を変えられるのかについて一緒に考えていきたいですね。
ビスケットを手に取っている様子。どのように分けるかをグループ内で議論されていました。

6.振り返り

ワークショップの体験を終えたあとは、振り返りを行いました。
1. 100人村のワークショップをして気づいたことや分かったこと
2. 今日のワークショップとSDGsのどのゴールが関係していると思うか
3. 持続可能な社会をつくるためにどのゴールが大切だと思うか
この3点について、それぞれで考え、シェアをして、その後何名かに発表をしていただきました。

「渡されたカードをもとに役になりきることによって、この国の人はこういう風に日本や他の国を見ているのかもしれないなと、別の立場になりきることで見える視点があって興味深い体験だった」

「これまでSDGsの17番『パートナーシップで目標を達成しよう』の重要性がいまいちピンと来ていなかった。でも、今日のワークショップで特定の誰かだけが改善に対して動こうとするだけではだめで、この世界に生きる全ての人が連携しながら動かないと解決には近づかないということを実感して、17番目の目標について腑に落ちた気がした」

など、皆さんそれぞれの視点やこれまでの経験を生かし、議論を深めてくださっていた様子でした。
3名程度のグループになって振り返りを行いました。

また、持続可能な社会をつくるためにどのゴールが大切だと思うかの問いについては、先生方ということもあってか、『4.質の高い教育をみんなに』を選ぶ人が多かったように思います。

そして、その教育という観点についても
「当初は4番を挙げていたが、教育は大事である一方で、そもそも昼間働かなければならないような経済状況にある子たちへの取り組みも進めていかないと教育を受けること自体ができないと気づき、土台として貧困のことなども合わせて進めていく必要があると感じた。」
といった意見が出るなど、より深い問いや気づきが生まれていたのが印象的でした。

ワークショップ教材はこちらです。


実は私自身 この100人の村のワークショップは初の参加だったのですが、多くの気づきがありました。

ワークショップを受けて、話す言語や経済の状況、受けている教育など、本当にさまざまなものが違うこと、そしてその違いは多様性という意味でのちがいだけでなく、理不尽な構造による違いもたくさんあることを体感しました。

合わせて、私自身もその状況に加担してしまっていると改めて気づきを得て、「自分の足元」からできることを見つめ直す機会になりました。

このような気づきを得られたのも参加者である稲城第五中学校の先生の皆さんが真剣にワークや議論を進めてくださったからこそだと思います!
(実際にグループに入って一参加者として話したいくらいでした!)

最後の感想で「自身のこの学びを子どもたちにも還元していきたい」と書いてくださった先生方も多くいらっしゃったため、今後子どもたちにも新たな気づきの場が広がっていってくれたらとても嬉しいです!

改めて稲城第五中学校の皆さん、ありがとうございました!
(報告:なかけん)

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