ボルネオ研修レポート・その2 開発の進むアブラヤシ(パーム油)プランテーションと小さな希望

こんにちは。スタッフの八木です。
ボルネオ研修レポート・その1では、プランテーション開発(経済)と減少する生物多様性について報告しましたが、今回は、経済と環境の共生のためのチャレンジについてレポートします。

滞在中は数回のリバー・クルーズがあり、キバナタンガン川沿いの森に暮らす野生動物を見ることができました。
朝6時。早起きして一番乗りです。鳥のさえずりに虫の声、森は朝からとってもにぎやか!

オランウータンには会えなかったけれど、カニクイザルやリーフモンキー、テングザルなどたくさんの猿に会いました。

推定7Mくらいの巨大なワニも!ガイドの方が「You are LUCKY!!!」と連呼。

とても自然豊かに見えますが、実は河川の汚染も進んでいるというお話でした。因果関係ははっきりしないものの、プランテーションで使われる農薬や搾油工場の廃液と無関係ではないようです(公害発生時に因果関係を証明するのは昔も今も非常に困難なことです)。

川岸にはアブラヤシの木を植えてはいけないことになっており、その幅は、川のサイズによって20m、50m、100mなどと決められているのですが…。あれ?

右側手前と奥はアブラヤシの木。この後ろはダダ―っとプランテーションが広がっています。ほか、川岸までアブラヤシが迫っているところもありました。

アブラヤシ、川岸まで植えられてます‥。
※上空から状況が分かりやすいナショナル・ジオグラフィックの写真もご覧ください。

リバー・クルーズのガイドもしてくれたNGO・KOPEL(コペル)はプランテーション企業と話し合い、時には川岸のアブラヤシを伐採し、植林を進めているそうです。植えるのは、早く成長する木、野生生物が食用にする木、高く成長して樹冠(キャノピー)を形成できる木など、さまざまな配慮をしているとのこと。

調査や苗の育成、エコツアーなどの保全活動は地域住民の雇用を生み、香木や籐、燕の巣などの森から得られる資源は収入向上にもつながっています。「小さな希望」のひとつです。

しかし。植えた木を何者かに引き抜かれ、気がつけばまたアブラヤシが植えられていた!なんてこともあったそう。森の資源も、業者などとの尽きることのない闘いが繰り広げられているようで、状況はシンプルではありません。

わたしたちも少しですが植林をしました。やり方を説明してくれたKOPELのスタッフは聾唖(ろうあ)の方。ユーモアを交えたすばらしいボディランゲージでサポートしてくれました。

とはいえ、川岸では今でも比較的良い森が残されており、追われた動物たちの駆け込み寺になっているとのとです。

また、かつての熱帯林にあった背の高い、樹冠(キャノピー)を形成していた巨木の森は、人間によって伐採され木材として消費されてしまいました。日本へもたくさんの木材が輸出されてきました。


ボートから川岸の植生や野生動物を観察しました。

「樹冠が形成されないと、なにか?」
と思うかもしれませんが、それは人間の考えること。野生動物にとっては一大事です。

かつては、樹冠をわたって森から森へ移動していた動物たちは、その通り道を失ってしまったのです。さらに、プランテーション開発で限られた森もどんどん狭くなり、地図を見るとプランテーションの海の中に島(patch)のように森が点在している状態です。

やむなくプランテーションに侵入して人間に見つかれば、駆除(殺害)されたり、捕まって売り飛ばされる危険が生じます。
※参考:10万頭以上のオランウータン、16年間で殺害=独英研究(BBC)

NGO・HUTANによるプレゼンテーション。広い森(上図)に800頭のオランウータンが生息している状態と、分断された森(下図)のそれぞれにに11頭、55頭、5頭などが生息している状態。

そして、閉ざされた森の中で暮らすことは、食料やパートナーとの出会いが限られてしまうことを意味します。親類ばかりの森の中で近親交配が進むと、体の弱い個体が生まれたり、遺伝子多様性も失われたりするそうです。これでは、野生生物の個体数だけでなく多様性も減っていくばかり…(なんてこった!)。

そんな状況を改善するためのチャレンジも始まっています。
そのひとつが、森と森の間に「吊り橋」をかけること。

リーフモンキー(たぶん)が橋を渡っています!時々足を滑らせながら渡る様子が愛らしく、野生動物にそれほど関心のないわたしも胸がときめいた。ここを訪れる観光客への啓発効果も高いそうです。

これは、現地のNGO・HUTAN(ウータン)に、日本のNGO・ボルネオ保全トラスト・ジャパン(BCTJ)が協力して実施しているもの。調査結果をもとに、「ここに橋があれば、オランウータンの生息域を広げることができる」と判断された場所に吊り橋を架けているそうです。

吊り橋プロジェクト(BCTJ)によると、実際にオランウータンが吊り橋を渡っている様子も観察されたそうで、命を守るチャレンジに期待が高まります。広いボルネオの中で、ここだけの取り組みではありますが、二つ目の「小さな希望」を見ることができました。

そして、あらためて「プランテーションは、もうこれ以上開発してはいけない」と思いました。
もうひとつの「小さな希望」については、レポート3(最終回)でお伝えします。
(報告:八木)

※文中に誤りがあり、訂正のうえ編集しました。(1月27日14時)

▼報告会やります!
2月14日(金)に本研修の報告会が開催されます。安間先生(動物生態学者)のお話は必聴!研修に参加した企業の方、教員の発表もあります。ぜひお越しください。
持続可能な森林経営のためのフォレスト パートナーシップ セミナー(主催:環境省)
https://www.gef.or.jp/news/event/fpp2020/

保全林の中のエコキャンプに1泊しました。高床式で1階部分は環境配慮型のトイレと水浴びスペースになっています。電気や水道はありません。

研修の最終日には安間先生(右から2番目)を囲んで交流しました。すばらしいコーディネーターと参加者に恵まれた研修でした。

コメント

コメントを投稿