こんにちは。スタッフの伊藤です。
ドイツの成人学習・教育(ALE)を進める財団、DVV Internationalの研修でスウェーデンに行ってきました。
DEARは2021年度より、ALEの取り組みをESDの視点から考えるプロジェクトに他の11の国・地域と共に参加しています。今回は、スウェーデンの持続可能な社会のためのALEの取組を学ぶべく、現地の成人教育機の訪問をしてきました。
水に囲まれ「水の都」とも言われるストックホルム |
スウェーデンなど北欧では、民主的な成人教育機関が有名なのですが、ここではまず、スウェーデンの成人教育機関の概要を説明し、後半で見学の様子を中心にお伝えしたいと思います。
※フォルクハイスクールは、民衆の民衆による民衆のための成人教育機関です。「フォルケホイスコーレ」としても知られていますがこれはデンマーク語で、英語ではフォルクハイスクール、日本語では民衆大学や成人教育大学が近いと言えます。ドイツ、デンマークのそれとは異なるのと、また、日本の教育システムとも異なるのですが、ここでは民衆大学としておきます。
1)スウェーデンの成人教育機関の仕組み:人々の啓発という考え方
見学に際し、スウェーデンの成人教育の概要について、現地の成人教育協会の方にお話を伺いしました。以下は、そのお話を元に、各ウェブサイトを参照したものです(自動翻訳を使用)。
スウェーデンの成人教育協会の方々。カリキュラムは?成績は?学費は本当に無料なの?と質問が飛び交いました。 |
(フォークビルドニングのサイトより)
2)学習サークルのための協会
スウェーデンには、全ての自治体に成人教育協会があり、成人教育協会は、学習サークルや文化プログラムに対して国からの助成金を使うことができます。つまり、誰でも学習サークルや、文学に興味のある人を集めてサークルを作ることができます。料理や水彩画、音楽など、さまざまなテーマで研究会が独自の学習サークルを開催しています。
また、成人教育協会による、ワークショップやお試しコース、週末コースなどもあります。近年は、庇護希望者との学習サークルや、人権に関する知識を強化するプロジェクトなどの社会的責任も担っています。
3)民衆大学(フォークハイスクール)
民衆大学は、主に成人を対象とした教育の一形態です。現在、スウェーデンには155あります。そのうち113校はNGOなどの「理念型」組織が運営し、42校は地域が公的資金を得て運営しています。民衆大学は、成人教育協会とともに、スウェーデンの組織的な公教育を構成しています。
研修で私たちが滞在した施設も民衆大学の一つで、体育系のコースを開講しています(学生の方がたくさんいました) |
通うには18歳以上である必要があり、多くは30歳以下です。多くのフォークハイスクールでは、生活と通学の両方が可能です。スウェーデンのすべての大人が対象で、どこの国の出身か、何語を話すか、障害があるかどうかは関係ありません。民衆大学に通うのは無料です。
教授法は、積極的な参加、会話、グループでの共同学習が特徴です。プロジェクトで活動することが一般的で、研修は参加者の予備知識や経験に合わせて行われます。中央で決められたコースやカリキュラムに縛られることはなく、多くの民衆大学は、「理念型」組織や民衆運動に基づく特徴を有していることが多いです。
民衆大学には、大きく分けて、一般コースと特別コースの2種類があります。
一般コースは、初等・中等教育を受けていない人が対象で、大学や専門学校を受験するための基本的な資格を得るためのコースです。一般コースでは、参加者は成績ではなく、特別枠で大学に入学するための基礎となる学習評価を受けることになります。
特別コースは、学習時間のほとんどを参加者が選択した特別科目に充てるタイプのコースで、プロファイルコースという言葉が使われることもあります。そして、長期コースと短期コースがあります
民衆大学は、多様な人々が異なる目的を果たす役割をしており、普通の学校になじめない人にとっては、進学への道となることもあります。あるいは、スウェーデンに来たばかりの人にとって、新しい社会との最初の接触を意味することもあります。そして、アーティストを目指す人にとっては、夢を実現するための第一歩となります。
民衆大学は、さまざまな理由で他の教育形態に居場所を見いだせなかった人たちを取り込むのに適しています。また、社会における教育レベルの向上と教育格差の均等化に大きな責任を負っており、参加する生徒の中には、学歴が浅かったり、スウェーデン語の知識が乏しかったり、あるいは障害を抱えていたりする人が増えてきています。近年では、国内のいくつかの民衆学校で、新入生を対象とした学習意欲向上コースや設立コースが設けられています。
以上が、成人教育協会と民衆大学の説明ですが、理念にはとても共感します。
実際はどうなのか、翌日から民衆大学に見学に行きました。
次回に続く。(報告:伊藤)
【参考】
Folkbildningsrådet
https://www.folkbildningsradet.se/om-folkbildning/
Folkhögskolarna’s Service Organisation
https://www.sverigesfolkhogskolor.se/om-folkhogskola/
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