「2050年に向けた欧州グローバル教育会議」in Dublinに参加しました!〈会議編その2〉

 <会議編その1>に続いて、1日目の後半と2日目の様子をレポートします。

もくじ

  1. パネルディスカッション2
  2. 分科会1:市民社会組織(CSOs)
  3. 分科会2:グローバル・クリティカル・フレンド
  4. パネルディスカッション
  5. 会議2日目:各国政府関係者とステイクホルダーのディスカッション
  6. 感想

1.パネルディスカッション2

パネルディスカッション2「グローバル教育2050宣言―多様性の中で団結し、共通のビジョンを目指す」では、「グローバル教育という言葉は、異なるが関連する概念や伝統をまとめるために使用される。新宣言のプロセスでは、さまざまなステークホルダーが参加し、共通のビジョンを策定している。このパネルディスカッションでは、ヨーロッパおよび世界におけるGEの概念と戦略の可能性を探る」と題した内容でした。

登壇者は、欧州ユース・フォーラム、CONCORD(持続可能な開発と国際協力に取り組むNGOの欧州連合)、ダン・レアリー・ラスダウン郡(ダブリン郊外の地域)議会、ユネスコGCED、コスタリカの民衆教育センターからの方々でした。

ユース・フォーラムの方からは、「ユースは政策是正の道具ではない」という言葉があり、「私たちに実践をする(行動する)スペースを設けてほしい」と発言していました。

コスタリカの民衆教育センターの方からは、「実践と学びの関係性を考え直さなければならない、全ての国で、民主的な文化の醸成が求められている」という問題提起がありました。
さらに、倫理的に直面している問題は、
  1. グローバルな状況の理解
  2. 批判的思考
  3. 批判的な教育学(生活を通して生活から実践する)
  4. 正義に向けた教育の推進
  5. 宣言のモニタリングプロセスと各地域の文脈で位置づけること
であり、私たち一人一人が社会を築く主体となり、歴史はその意味で可能性のあるものであるはず、「全てのグローバルなものはローカルなのだ」と語られました。

その他、以下のようなことが話されました。
  • 「Saving the world is saving the local(世界を救うとは地域を救うこと)」として、自分たちの毎日の行為とグローバルなつながりを持たなければならない。
  • 「共に生きること」とは、異なる観点の人をちゃんと聴いて尊重することであるため、意識喚起を超えて、スペースを共同でつくっていかなければならない。
  • ユースに託すというのではない。ユースが大人になるまで待っていられないのだから、学ぶスピードをあげながら、現在の状況をアンラーンしていかなければならない。
このセッションのときに、準備から何からお世話になったGENEの事務局の方から、「動画を作成するためのインタビューを受けてほしい」という声がけされ、内心「いや、このセッション、いいところなんだけど!」と思いながら、「グローバル・クリティカル・フレンド」の役割を果たさなければいけないかな…、と思って応じてしまいました。ちょっと残念…。

インタビューは、「ESDやグローバルシティズンシップ教育など、いろいろな言葉がありますが、どのような用語を使っていますか?」「ダブリン宣言への期待は?」などでした。
カメラを前に緊張して、しどろもどろだし、自分では見たくありません…。

2.分科会1:市民社会組織(CSOs)

この後、分科会1として、市民社会組織(CSOs)、政策研究者、地域や地方政府、GENE政策立案者ラウンドテーブル(クローズドセッション)、に分かれました。
私は市民社会組織に参加しました。

グループに分かれ、
  1. 今回採択される宣言の実行を確かなものにするためにはどうしたらいいのか?次のステップは何で、どう踏むか?
  2. CSOsの実行の役割は何か?CSOs間や他のステークホルダーとどう協働できるか?
というお題でディスカッションをしました。
私のグループでは以下のようなことが話されました。
  • 互いに感謝をしながらコミュニケーションをとり、メッセージを伝えていくこと。
  • 各国や各背景から、実行の地図を描く。それは、現在とのギャップを浮き彫りにし、アドボカシーにもなっていく。
  • 行動枠組みやタイムラインをつくる。
  • 資金分配。
  • CSOsは、ただの被譲与者ではない。評価者となっていく。監視する。
グループワークの様子

いくつかのグループ発表をしてセッションを終えました。

3.分科会2:グローバル・クリティカル・フレンド

次の分科会2では、若者、フォーマル教育、成人・地域教育、グローバル・クリティカル・フレンド(クローズドセッション)に分かれ、本当は成人・地域教育に参加したかったのですが、グローバル・クリティカル・フレンドの会合に参加しました。

一人ひとりの自分や団体の自己紹介、この会議を経て達成したいこと、宣言内容へのコミット、というなかなかハードルの高いお題を出されたのですが、一人3分程度でしたので、みんな好きなことを話しました。

私は、この宣言に「行動枠組み」は作られないのか、モニタリングするとしたらどういう枠組みで評価をしていくのかを聞きたいと思っている、ということと、そして、グローバル教育の推進のためには、そもそも教育が管理的であっては遂行できないが、日本は学習指導要領を通じて学ぶ内容への政府のコントロールが強く、その中でグローバル教育の実施など到底難しいので、そこから変えていかないといけないと思っている、とお話ししました。

みなさん、大変個性的で、笑いやユーモアのある楽しい会でした。

グローバル・クリティカル・フレンドの集合写真

4.パネルディスカッション3

最後のパネルディスカッション3は「欧州の全ての人に質の高いグローバル教育を渡すために–達成を改善し新しいパラダイムを探究する」というテーマで「グローバル教育はどのようにイノベーションを受け入れ、従来とは異なる支持者を取り込み、新たなパートナーシップを奨励/発展させるか」が語られました。

1日の後半で、頭も疲れたのか、メモが大変乱雑で、以下、細切れの拙い論点のご紹介となってすいません。
  • 貧困状況にあるユースの参加のファシリテートに課題がある。公共図書館やユース・センターなども参加していない人たちにどう参加してもらうのか。参加を奨励していかなければならない。
  • SNSは多くを知ることができても、暴力にもなる。そのことに気づかなければならない。使わなくても良いのではないか。常にデジタルの良い面と悪い面を批判的に省察しなくてはならない。
  • 学習をすぐ労働の成果にしてしまう。
  • 共感とは同情ではない。エンパワーである。
  • グローバル教育は新しいものなのでなく、先住民の人たちの中にあるものであり、そこから学ばなければならない。
これで、1日のプログラムを終え、政府代表たちは、ダブリン城での素敵なフォーマル・ディナーがあったようです。 

私はといいますと… 

実は近藤、アラブの文化が大好きなので(今年も、成人教育会議でモロッコ、マラケシュに行けて大変心が盛り上がりました)、偶然にもモロッコ、マラケシュ出身でスコットランドの大学の先生、ナイジェリアの大学の先生、リビアの国連子ども・ユースメジャーグループ事務局の方と話が盛り上がってしまい、レバノン料理を食べに行ってしまいました(ノンアルコール、笑)!


アラブ系の皆さんとダブリンでレバノン料理

5.会議2日目:各国政府関係者とステイクホルダーのディスカッション

2日目です。この日は半日で終了しました。

まずは、代表者たちによる「各国政府関係者とステイクホルダーのディスカッション」をライブ配信にて他の参加者が中継で視聴する、という形でした。

各国政府代表とステイクホルダー代表が、グローバル教育政策推進に向けて意見表明をしていく場でした。 

この場が重要なのは承知ながら、正直、会場で生中継される動画を視聴するというのは、見ている方からするとなかなか、熱量が下がる感じがありました。

しかし、途中、GENEの事務局のスタッフなのかインターンなのかはわからなかったのですが、写真係をしている若者が突然発言に割り込むシーンがありました。

マイクを通していなかったので何を言っているのかはよくわからなかったのと、口を挟むタイミングも、前に発言した人に「意義あり」という感じでもなかったため、私も若者の意図がよくわかりませんでした。

もちろん、そこは、各国政府代表と招聘されているステイクホルダーの発言の場であるため、適切ではありませんでしたので、進行者にたしなめられました。その後、ユースのステークホルダー代表の方が、2回目の発言の際に席を彼に譲り、彼が発言しました。

とても緊張した様子で話した内容は、「デジタルツールは素晴らしいのでもっと教育で活用するべきだ」といった内容であり、会場でも、ざわざわとなりましたが、「わざわざ主張するようなことなのか?」「何がそうさせたのだろう?」「それでも彼は主張したかったのだろう」「こういう不適切な行為がユースの信頼を損なうのでは」など、いろいろな意見がありました。

また、この中継の途中からは、会場外で各団体のポスターセッションがあり、自由に参加できました。

ポスターセッションの様子

最後に、「ダブリン宣言」を採択し、クロージングセッションがあって、会議は終了しました。

6.感想

この会議と宣言プロセスは、ステークホルダーとの丁寧な会合が2021年6月から複数回にわたってもたれてきた点が前回と異なるようです。事務局の中村さんも、今年のオンラインコンサルテーションに参加していました。

そして前回の会議は、リーマンショック後の高い失業率や緊縮財政、移民排斥といった課題が大きく取り上げられていたようですが、それに比して今回は、明確な社会課題からというよりは、教育の転換と行政横断的取り組みの強調、ユースの焦点化が主なハイライトであったと思いました。先進的な教育大国の存在感がとにかく大きかったです。イギリスからの参加者がいなかったことも大変気になりました。EU離脱からもはやGENEのメンバーではない、ということなのか、ちょっとわかりません。

また、「2050年」とSDGsからさらに20年を見越した未来に向けていますが、具体的にその時にどのような世界になっていることを想定するのか、という議論が足りていなかったように思います。

特に「脱植民地主義」という言葉も頻繁に使われるのですが、産業構造の転換とそれに向けた価値観や合意の話が、話されているようで足りないと思いました。移民の話題もほとんどフォーカスされなかったです。繊細な問題なのでしょうか。

一方で、政府が市民社会を明確な政策パートナーとして捉え、横断的に取り組む姿勢は大変羨ましく思いました。また、開発省や教育省の人たちと「グローバル教育」概念がここまで共有できる、というのは日本ではちょっと考えられないと思います。

会議運営の環境配慮もされており、ペットボトルはもちろん一切出されませんでしたし、細かいところで無駄がないなあ(モノがあまりない)と感じました。GENE関係者が宿泊しているホテルは”sustainability policy”を徹底したホテルだったようです。

最後になりますが、実はちょっと残念だったのは、「お城で会議!?」と興奮気味だったのですが、会議は城内の以下のコンベンション建物だったのです(笑)。

ちょっと興醒めしてしまい、こっそり会議終盤に、他国から来ていた参加者に、「ちょっとそこが期待はずれだったのよね」話したら皆さん、「私もそう思った」と言っていました。
歴史的場所が未だに活用されている、という点では素敵なことだと思います。

会議終了後、入館料を払って、お城内部の観光をしてきました。

会議が開催された建物(左)と観光公開されているお城の客間

さて、次回は会議前に訪問した、アイルランド成人教育協会とアイルランド開発教育協会についてご報告したいと思います。(報告:近藤牧子)

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